2018.12.25

引退試合後に後藤武敏を喜ばせた、
息子からのまさかのサプライズ

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Kyodo News

後藤武敏インタビュー(後編)

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 今シーズン限りで16年間の現役生活に別れを告げた横浜DeNAベイスターズの後藤武敏。横浜スタジアムで行なわれた引退セレモニーでは「初めて見た」という同級生の松坂大輔の涙もあった。そして引退試合を終えて帰宅した後藤にはもうひとつのサプライズが待っていた。

現役最後の打席は空振りの三振に倒れた後藤武敏―― 引退セレモニーでは「横浜は第2の故郷」とスピーチしていました。横浜スタジアムでプレーする時、横浜高校時代のことを思い出しながらプレーしたことはありましたか。

「少なからずありました。西武からトレードになる時も、西武球団の方から『里帰りだぞ』というニュアンスのことを言ってもらえたので、僕もそんな気持ちになりました。中学を卒業して右も左もわからない中で生活した街ですし、大学(法政大)も合宿所は横浜に近かったので、印象深いんですよね」

―― ベイスターズのファンも、まるで生え抜き選手のように後藤さんを応援していたように見えました。

「でも、僕自身は不安でしたよ。30歳を過ぎてのトレードでしたし、横浜高校時代なんて随分と前のことじゃないですか。だけど、後輩から”ゴメス”のあだ名をもらって、ファンの人たちにも浸透して、すごく受け入れてもらえた。横浜スタジアムの歓声って特別で、本当に鳥肌が立つ。それまでにない初めての感覚でした。

 これだけ応援してくれる人たちのため結果を出さないといけないという思いで、1打席のために準備を欠かしませんでした。バットは常に持ち歩いていて、ホテルの部屋にも必ず1本。何か気づいたら振れるように。また、打席に入るまでのルーティンも大切にしました。それはベイスターズに来てからですかね。決まった所作をするというのはしんどいこともあったけど、期待に応えたいという一心だけでした」

―― ところで、引退試合にはご家族も来られていましたが、お子さんは野球をやっているんですか?

「それが聞いてください。すごいんです。上の息子が小4なんですが、それまでは『野球やる?』って聞いてもまるで無反応だったんですが、引退試合から帰宅した直後ですよ。グローブを持ってきて『キャッチボールをやろう』と。そこから僕が家にいる時は毎日。それにバッティングセンターにも連れて行ってとせがまれるようになって、トントン拍子で地元の野球チームに入ったんです」