2018.10.11

西武もヤクルトも好機で代打なし。
打席に立つ両エースが背負った信頼

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

西武×ヤクルト “伝説”となった日本シリーズの記憶(10)

【同級生】西武・石井丈裕 後編

(前編の記事はこちら>>)

石毛宏典のアドバイスから生まれた奇跡の一打

――1992年日本シリーズ第7戦、ライオンズの先発は石井丈裕さん、対するスワローズはシリーズ3度目の登板となる岡林洋一投手でした。そこまでシリーズ2完投の岡林さんのピッチングはどのようにご覧になっていましたか?

石井 「よく中3日で投げられるな」と思っていましたね。僕はこのとき中4日でしたけど、当時ですら中5日、中6日が当たり前でしたから。中4日で投げるというのは、何て言うのかな……、時差ボケの中で投げるような感じなんです。まったく体が動かないんですよ。一日中、ボーッとしている感じですから、中3日だともっと体が動かないと思うんです。だから、岡林くんは気力で投げていたんじゃないですかね。

1992年の日本シリーズMVPに輝いた石井氏 photo by Snankei Visual――この試合は石井さん、岡林投手の白熱した投手戦となりました。ぜひ伺いたいのは、0-1のビハインドで迎えた7回表、ライオンズの攻撃。2アウト1、2塁の場面で打席に入ったのが石井さんでした。石毛(宏典)さんは「この場面が忘れられない」と言い、伊原(春樹)さんは「この場面はタケを交代させることはできなかった」と言っていました。

石井 僕自身も、「代打かな?」と思っていましたけど、チームからの信頼を感じられたのはすごくうれしかったですね。正直なことを言えば、「打てないよ」って気持ちのほうが先に立ったんです。そのときに、ベンチの石毛さんから呼ばれて、「タケ、バッティングも気持ちだからな」って言われて、必死でボールに食らいつきました。あのひと言がなかったら絶対に打てていなかったと思うし、一生忘れられない言葉です。

――まさに、石毛さんもこの場面のことを熱く語っていました。石井さんの打球は、センターを守っていた飯田哲也選手のグラブをかすめてタイムリーヒットとなりました。

石井 石毛さんの言葉がなかったら、絶対にバットに当たっていませんでしたね。僕自身もビックリして、走り出すときに空足を踏んで、すっ転びそうになっているんです(笑)。だから、ボールが飯田くんのグラブに当たって転がっていたのにセカンドまで行けなかったんです。でも、あの1点がなかったら延長戦にもならなかったわけだから、本当に奇跡的な一打だったと、自分でも思います。