巨人がドラ1で狙うべきは金足農・吉田より「ミスター・コンスタント」

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 高校卒業後の進路に注目を集めていた金足農の吉田輝星が、当初予定されていた八戸学院大の進学を辞退し、10月10日"プロ志望届"を提出した。

 今月初め、福井国体で高校野球生活最後の奮闘を見せたあと、初めて進路について触れた時の言葉が印象的だった。

「後悔しないような道を選びたい」

 この言葉を聞いて「あっ、プロだな」と、すぐにわかった。

プロ志望届を提出し、記者会見する金足農・吉田輝星(写真中央)プロ志望届を提出し、記者会見する金足農・吉田輝星(写真中央) 吉田を初めて見た時の印象は、投げ込める投手だということだ。リリースの瞬間、ただボールを離すだけでなく、指先に力を入れてグッと前にボールを押し込むイメージ。そういう力の入れ方をできる投手というのは、じつはプロの世界でもそう多くいるわけではない。

 昨年のドラフトでいえば、鈴木博志(ヤマハ→中日ドラフト1位)や、東克樹(立命館大→DeNAドラフト1位)、石川翔(青藍泰斗→中日ドラフト2位)がそうだった。一昨年なら山岡泰輔(東京ガス→オリックスドラフト1位)、山本由伸(都城高→オリックスドラフト2位)ぐらいで、数えるほどしかいない。

 その指先の押し込みが生み出す猛烈なバックスピン。とくにベルトより上のゾーンは、明らかにボール球なのに打者はつい手を出してしまう。駒大苫小牧高時代の田中将大(現・ヤンキース)が、夏の甲子園でも何度も見せたあのホップするような球筋だ。

 ただ私は、この夏の甲子園での大活躍を踏まえても、進学してからプロを目指してもいいんじゃないかと思っていた。

 たしかに、好調時の吉田のストレートの質は、おそらく今年の高校生のなかでもナンバーワンだろう。それにチェンジアップやツーシームもすばらしいし、フィールディングやけん制も一流。彼のプレーから、抜群の野球センスが見てとれる。

 その一方で、ストレートとともにピッチングの軸となるべきスライダーが弱い。本来、スライダーは変化球ではなく、キュッと鋭く曲がる"速球"である。ストレートと見分けがつかない球筋で、手元でキュッと曲がるから打者は翻弄されるのだ。しかし吉田の場合、そのスライダーの曲がりが早く、打者からすれば厄介なボールではないのだ。

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