パの猛者もタジタジ。無双のオリックス
19歳セットアッパーは何者だ? (2ページ目)
一軍の生活にはそれなりに慣れたものの、毎日のブルペンでの調整にはまだ戸惑いを感じているという。それでもマウンドでの緊張感を楽しんでいると言ってのけるところに、大物の片鱗がうかがえる。
「マウンドに上がれば『冷静に』って心掛けているんですけど、もう投げ始めれば夢中ですね。それで、うまく抑えたときは楽しいなって......」
ブルペンでのルーティンは、先輩投手を見ながら模索中だ。
「二軍にいるときは、佐藤(達也)さんや塚原(頌平)さんにブルペンでの過ごし方とか、いろいろ教えてもらいました。オリックスの先輩はみんな優しいんです。ただ仲がいいとかじゃなく、野球の話になると先輩後輩関係なく、情報交換できるところがいいですね」
試合が中盤に差しかかると、山本はブルペンで準備を始める。
「3、4回になると、ある程度、試合の流れがわかってくるというか、展開が決まってくるじゃないですか。そこから逆算して準備します。大体7、8割は予想通りの展開になります。試合がいい感じに進んだら、『今日はあるな』って」
週1回の登板に備える先発投手と、毎日ブルペンでスタンバイするリリーフ投手は、まったく別のポジションと言ってもいい。その最大の違いは、「気持ちの持っていき方」と山本は言う。
緊迫した試合で気持ちが高ぶっていたにもかかわらず登板がなくなることもあれば、序盤から大量点が入り「今日は登板なし」と思った矢先に試合がもつれてマウンドに上がることもある。だから、まったくノースローという日はほとんどない。
セットアッパーは、短いイニングながら常に全力投球が求められる。山本は「体力的には問題ない」と言うが、精神面では大きな負担を強いられている。だから、気持ちのスイッチの入れ方に気を配っている。
「毎日緊張していたらきついじゃないですか。毎試合『今日も行くぞ』って思っていたら、やっぱりしんどい。抜けるところは抜いていこうと思っています。だから、投げそうにないときは、できるだけリラックスするようにしています。それでも、気持ちを抜いてもゼロにはならないように。何が起こるかわからないので......」
山本といえば、鋭く落ちる高速カットボールが今や代名詞のようになっているが、これは今年になってから習得したボールだ。オフに覚え、もう実戦で武器になっているというのだから、元来器用なのだろう。
「スライダーを投げると真っすぐが遅くなるって言いますが、僕の場合はそういうことはないんです。でもスライダーを投げすぎると、ちょっと疲れてくるんですよね。それで、打たせて取る球はないかなって考えていると、カットボールを思いついたんです。キャッチボールとかで練習してみたら意外と感覚がよくて。それで試合でも使い始めたんです」
2 / 4