2018.07.06

パの猛者もタジタジ。無双のオリックス
19歳セットアッパーは何者だ?

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Kyodo News

 野球界には”ラッキーセブン”という言葉がある。試合終盤の山場に差しかかるこの時、ファンは何かが起こることを期待し、応援にも熱が入る。

 実際、このあたりで膠着状態になっていた試合が動くことも多い。好投していた先発投手に疲れが出たり、クローザーにつなぐ中継ぎの調子がいまひとつだったり、理由は様々だが、クローザーの出番が1イニング限定となった現代野球において、追いかける立場のチームのテンションが一番上がるのが、7回、もしくは8回である。

 だからか、「このイニングを任される投手はクローザー以上に負担がかかる」という球界関係者もいるぐらいだ。

 現在、メジャーのアリゾナ・ダイヤモンドバックスで活躍中の平野佳寿も先発からリリーフに回ってしばらくはクローザーの岸田護へとつなぐセットアップ役を担っていたし、阪神の藤川球児がブレイクしたのも久保田智之へとつなぐセットアッパーだった。

 セットアッパーから球界を代表するクローザーへと成長し、その後メジャーのマウンドにも立った2人に共通していたことは、年齢が若く、球が速かったことだ。つまり、現代野球でもっとも試合が動くこのイニングを乗り切るには、圧倒的な球威が必要といえる。

 加えて、勝ち試合限定のクローザーと比べ、同点や僅差のビハインドでの登板も多く、体力的、精神的なタフさが求められる。そういう意味で、まだ怖いもの知らずの若武者にはぴったりのポジションといえるが、それだけの力量があるピッチャーはそういるものではない。

 そんな中、交流戦で勢いに乗り、久しぶりのAクラスを狙うオリックスに若きセットアッパーが誕生した。2年目の山本由伸だ。

オリックスのセットアッパーとして大車輪の活躍を見せる山本由伸 昨シーズン、高卒ルーキーながらファームで先発投手として8試合に登板し、防御率0.27という驚異の数字を叩き出した。夏場には一軍に昇格し、プロ初勝利を挙げている。

今シーズンもオープン戦までは先発ローテーション候補として一軍に帯同していたが、結局、開幕一軍は果たせず。それでも、二軍では無双状態で、2勝0敗、防御率0.38。首脳陣はこの若武者をセットアッパーとして起用することにした。

インタビュー当日、試合前にトレーニングルームに現れた山本は、この日のイベントに合わせた普段とは違う企画ユニフォームに上機嫌だった。

「だって、なんだか楽しいじゃないですか。こういうの、嫌いな人はいないんじゃないですか」

 本当は持ち帰りたいのだが、「試合後には回収されるらしいんです」と残念そうな表情で語る姿には、まだ少年のあどけなさが残っていた。