松坂大輔「去年の10月、ある施設で
先生が肩をはめてくれたんです」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

── 3月4日、ナゴヤドームで投げたイーグルスとのオープン戦は久々の実戦でした。あの試合、どんな光景を思い出しますか。

松坂 何を思い出す......そうですね。ベンチ前からマウンドへ向かっていくときの、自分がマウンドを見ている、その視界ですかね。

── マウンドがどんなふうに見えたんですか。

松坂 なんとなく、そこに自分が立ってる姿をイメージしながらマウンドに向かってました。今の僕にとっては、それができたということが特別だったんです。故障して、手術して、リハビリして、ファームのゲームで投げたりもしましたけど、ずっと、マウンドで不安なく腕を振っている自分の姿がまったくイメージできなかった。でも今は、もちろん不安はあるんですけど、簡単にそれがイメージできる状態にまで来ています。

 マウンドに立てばバッターがパッと頭の中に出てくるし、キャッチャーが出てくる、審判も出てくる、スタンドにお客さんが入っているシーンも出てきます。そういうイメージが、やっと当たり前にできるようになった自分が、まず浮かんできますね。

── 試合で投げたストレート、変化球は、ご自分の目にはどんなボールに映っていたのでしょう。

松坂 そこは今ひとつでした。ボールをいまいち、掴み切れていなかったんです。自分が思っているタイミングよりも、ちょっと早くボールが指先から逃げちゃう。しっかり掴んでいると、下にグッと押せる感じが出てくるんですけど、その感覚まではもうちょっとという感じでした。特に、ここという場面でそのボールが出てくれないと、まだまだかなって思います。

── 去年、ずっと右肩の痛みに苛(さいな)まれて、投げられない状態が続いていたのに、いつから痛みが消えて、投げられるようになったんでしょう。

松坂 去年は、誰かからいいと聞けば、日本中、あちこちの病院や施設に行きました。日本には本当にいろんな治療法があるんだなということをイヤというほど思い知りましたからね(苦笑)。でも、なかなか肩が痛い原因を突き止めることができませんでした。それが去年の10月、ある人の紹介で運動力学を研究している施設へ行って肩を診てもらったとき、「こうすればよくなるんじゃないか」と言って先生が肩をはめてくれたんです。そのとき、感覚的には本当に久しぶりに、自分でも肩がはまった気がしました。で、もしかしたらと思ってボールを投げてみたら、投げられるようになっていたんです。

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