松坂大輔「去年の10月、ある施設で先生が肩をはめてくれたんです」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

── 長い間、肩がはまる感じを求めていたんですか。

松坂 肩が正しく動くための肩の関節の位置がなかなか決まらなかったんです。投げられない間も、投げられるように肩回りの筋力を鍛えてはいたんですけど、しっかり肩を回すためのその位置に、いつまでたってもはまってくれなかった。肩が関節にきちっとはまらないと、正しい場所にないわけですから、どれだけ筋力をつけても肩を回すとブレが出て、いろんなところに当たって、それで痛みが出てくるわけです。

── じゃあ、その10月の治療を境に投げられるようになったと......

松坂 そうですね。ただ、その治療がきっかけではありましたけど、ずっとリハビリして鍛えていた身体を、やっと使えるようにしてもらったという感じのほうが近いかな。そこからです。その治療から2週間後にはブルペンに入って、投げられるようになりました。

── 痛みの原因は右肩の肉離れと聞きましたが、珍しいですよね。

松坂 僕も初めてです。でも、なぜ肉離れを起こしたのかはよくわからないんですよ。こういう衝撃を受けたらそうなるという説明は受けたんですけど、そんな覚えはないし......だから、痛くないところを探しながらイレギュラーな状態のまま、ずっと投げ続けたことによって、僕の場合はその部位に負担がかかって肉離れを起こした、と理解しています。それが、最後の最後でうまくはまってくれて、痛みが消えたということなのかもしれません。

── ホークスのとき、工藤(公康)監督が、「ある日突然、痛くなくなることもあるんだから、あきらめずに頑張れ」と、自らの経験を踏まえて励ましてくれたと松坂投手が以前、おっしゃっていました。そういうことが現実に起こったという感覚ですか。

松坂 確かに工藤監督はそうおっしゃっていましたけど、もちろん何もしないで痛みが消えるのをただ待っていたわけじゃないと思うんです。なんとか投げられるようにするためにいろんなことをしてきたんでしょうし、その積み重ねの結果、何かがうまく噛み合って痛みが消えたんじゃないかと、自分の痛みが治まったとき、そう思いました。治療法には合う、合わないがあるとは思っていましたけど、これだけいろんなところへ行ってるのに、こんなに合わないものかって、ホント、思いました。それでもあきらめずにリハビリを続けてたからこそ、自分にも何かが噛み合う瞬間がきてくれたのかなと思っています。

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