早すぎたトライアウト。「高卒プロ入り→戦力外」の道に後悔はあるか (2ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 そう断言できる充実した時間を過ごし、研鑽(けんさん)を続けてきた岸本はその年のオフ、念願の支配下登録を勝ち取った。

 2ケタの背番号を手にし、満を持して臨んだ4年目の今季だったが、一軍昇格はならず。シーズン終了後に「あるかもしれないと、警戒はしていました」という戦力外通告を言い渡され、今回のトライアウトに挑むこととなった。

「背番号59は支配下登録のときに自ら選んだ番号なんですが、一軍のマウンドを見せてやれず、かわいそうなことをしてしまった。(トライアウトの)会場が一軍の試合で使う球場だったので気合いが入りました」

 気合い十分で臨んだマウンドで2つの三振を奪い、許した安打も内野安打の1本のみ。最速145キロをマークし、本人も「球速以上にボールが走っている感覚があった」と手応えを口にした。

 話題がドラフト当時のことに及ぶと、岸本は言葉を選びながらこう答えた。

「いま思うと『将来的に上位で』と、進学するのもひとつの手段だなと思います。だけど、当時は『プロに行きたい』という気持ちばかりで、それ以外の選択肢は考えられなかった。考える力がなかった......といえるかもしれませんね。今回、戦力外になりましたけど、高卒の育成選手としてプロの世界に飛び込んだことに後悔はまったくありません」

 現在21歳。「ケガもないし、体もバリバリ動く」と吉報を心待ちにしている。

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