30歳のトライアウト。手術、育成、
戦力外でも「元怪物」は終わらない

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 身長は今回トライアウトに参加した51人のなかで最も高い192センチ。その大きな背中にある番号は「001」。元楽天のサウスポー・片山博視はこの2年間、育成選手としてシーズンを過ごした。ただ、過ごしたといっても、今年3月に左ヒジの側副靱帯の再建手術(トミー・ジョン手術)を受け、リハビリに明け暮れる毎日だった。

トミー・ジョン手術を受けた時点で、戦力外通告を受けるかもしれないという覚悟は持っていました」

今年3月にトミー・ジョン手術を受けた片山博視今年3月にトミー・ジョン手術を受けた片山博視 4月に30歳となった育成選手がシーズン前に手術を受けるということは、そういうことでもあった。10月1日に球団から戦力外通告を言い渡されると、片山はトライアウトを目標とし、調整を続けてきた。

 手術から8カ月。良化途上での登板は、打者4人に対し、1安打、1四球、2奪三振。この日の最速は134キロだったが、片山は「予想していたよりも15キロぐらい速かったです」と顔をほころばせ、こう続けた。

「ピッチング練習でも120キロぐらいがほとんどでしたし、今日のブルペンでは(ヒジに)少し痛みがありました。自分でも大丈夫かなと思ったんですけど、思っていた以上に投げることができました」

 正直、ボール自体は、ネット裏に並んだ各球団の編成担当者の目を引くものはなかった。しかし、登板後の片山は終始、晴れやかな表情を浮かべ、報道陣の質問にも丁寧に答えていた。

「ここで投げられたことが一番。結果より、まずマウンドに立てるかどうかだったので......。生き残りの場ですけど、本当に久しぶりに実戦のなかで投げられて、やってきたことが間違いじゃなかったと思えました」

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