飯田の超絶バックホーム、イチロー対策...。日本シリーズ舞台裏の秘話
名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第14回
4勝すれば優勝という短い戦いのなかで、これまで数多くの名シーンが生まれ、名勝負が繰り広げられてきた。ヤクルト、近鉄のコーチとして4度の日本シリーズを経験した伊勢孝夫氏も、そんなしびれるシーンを何度もベンチから見てきたひとりだ。今も語り継がれる名シーンの裏側を語った。
95年、日本シリーズでヤクルトに敗れ、肩を落とすイチロー 日本シリーズは引き分けを除けば最大で7試合だが、これが実に長く感じる。その理由はいくつもある。まず、同じ相手と対戦し続けるという点だ。シーズン中なら、3試合で相手が変わる。それによって気持ちの切り替えができるし、移動して場所も変わればリフレッシュすることができる。実際、それがプレーに反映することも多い。
ところが日本シリーズは移動日を挟んでも、再び同じ相手と戦わなくてはならない。要するに、本当の意味でリフレッシュするときがないのだ。また、2試合、3試合、2試合というレギュレーションも体力的にきつく、疲労がたまりやすい。シーズン中には感じることのない、何ともいえない重苦しさがある。
ただ、何より長く感じさせるのは、1試合の疲労度の違いだろう。日本シリーズはひとつのプレーで大きく流れが変わる。だから、ミスは絶対に許されない。シーズン中ならミスをしても、次の試合、もしくは次のカードで帳消しにできるのだが、日本シリーズはそのミスが敗退につながる。それだけに選手もベンチもギリギリのところでやっているから、1試合の重み、ワンプレーの重みがまったく違うのだ。
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