もうガムは嚙まない。DeNA梶谷隆幸が自身を語るロングインタビュー (8ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu
  • 小池義弘●撮影 photo by Koike Yoshihiro

 やっぱり勝てるようになってきたこと。お客さんが増えてきて、空席がほとんどなくなって......勝ちたいですよ。自分が打てばもの凄く盛り上がってくれるんですよ。本当に応援は力になると実感したし、チームが勝てばどんどん大きくなってくる。そういう意味でも僕はかなりいろんな経験をさせてもらいました。野球界でもなかなかいないんじゃないかってぐらい、結構"味わって"きましたからね。その分成長させてもらえたと思いますよ。腹決めてやればいいという風に思えていますから」

 昨年のCSファーストラウンド。梶谷は見たことがないほど青く染まった東京ドームに震えるほど感動した。死球で左手の薬指を骨折し交代を告げられた際に、プロに入って初めて涙が溢れてきた。自分に克つために抑えてきた感情が抑えられなくなるほどの衝動を感じていた。

「CSの東京ドームは本当に衝撃でした。ああいう風景を見せられちゃったらね......。あ、頑張りたいなって思いますよ。僕、プロに入ってからずっと苦しくて、野球が楽しいと思えたことなんて一度もなかったんです。小学校から高校まで楽しくてしょうがなかった野球が、どこか苦しいものになっていた。それがようやく去年、試合の中で自然と思えたんです。楽しいって。

 あのクライマックスを体験してしまったことで、その先にある優勝というものが、どれだけ良いものなんだろうって想像するようになりました。ちょっと前の僕には絶対にわからなかった感情です。ベイスターズが低迷していた時代、僕は一軍のベンチにも入れない選手でした。父親にも『チームの控えが遊んでる暇はないぞ』ってよく言われて。すごく嫌でしたよ。だからなのか、今は具体的な数字よりも、強いチーム、常勝チームの主力選手と呼ばれるようになりたいんです。ベイスターズ、すごくいいチームですから」

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