「ムネリ~ン」の声が飛ぶ雁ノ巣で、川﨑宗則が明かす一軍昇格への思い (2ページ目)

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

 しかし、そこはプロだ。ただ「楽しい」だけで一軍のグラウンドに立ち続けることはできない。だからこそ、川﨑は忘れていた日本野球の感覚を取り戻すためにファームでプレーを続けている。そしてこの日、本人曰く「苦い思い出しかない」という雁ノ巣に戻ってきたのだ。

 23日は慣れ親しんだ内野ではなく、「1番・レフト」で先発出場した。
 
 見せ場はいきなりやってきた。1回表、阪神の2番・俊介が放ったライナー性の当たりをスライディングキャッチ。慣れない外野での守備ではあったが、"古巣"の風の強さを体は忘れていなかった。

 試合後、「井出(竜也)コーチの指示のおかげ」と謙遜したかと思えば、「センス抜群でないとできないよ。あれで今日は勝ったようなもんだね」と周囲を笑わせる余裕は、一軍での外野起用に自らゴーサインを出したようにも思えた。

 打つ方では、最初の打席から積極的に打って出た。スピンがきいたゴロはファーストの手前でイレギュラーし、ライト前に転がっていった。記録はエラーとなったものの出塁し、先制のホームを踏んだ。

 第2打席は、ランナーを一塁に置いて、阪神先発のルーキー・福永春吾の外へ逃げるツーシームをあえて引っ張り、センターとライトの間に持っていった。その打球をセンターがファンブルするのを見逃さず、二塁を陥れたその走塁に、味方だけでなく敵の若い選手も舌を巻いていた。

 第3打席は四球、第4打席は高めのストレートを空振り三振に終わったが、元メジャーリーガーの存在はまぶしすぎるほどの輝きを放っていた。

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