WBCの悲劇。そのとき、豪腕サウスポー石井弘寿に何が起きたのか (4ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

──WBC第1次リーグの韓国戦。石井さんは2対1と日本がリードした8回にマウンドに上がりましたが、李承燁にツーランホームランを打たれて逆転負けを喫します。

「韓国に勝っていれば1位で通過できたはずなのに、チームに迷惑をかけてしまいました。その後、2次リーグのためにアメリカに渡りました。少し期間が空いていたから、休ませれば元に戻るだろうと考えたんです。ところが、ますます悪化して、痛み止めが切れれば激痛で夜も眠れないような状態で......これ以上迷惑をかけるわけにはいかないので、チームを離れ、日本に戻ることに決めました」

──韓国戦のあとに肩の検査はしなかったのですか。

「悪い状態だとは感じていましたが、なんとか投げられるはずだと信じて、診てもらいませんでした。アイシングしたり、トレーナーに治療してもらったりして、なんとかしのごうと......でも、結果的には最悪でしたね。自分ではベストの選択をしたつもりでしたが、大きな迷惑をかけてしまいました」

──そこから石井さんの肩の痛みとの戦いがずっと続きます。

「普通ならば、炎症が治まってから肩のアライメントを整えていけばボールを投げられるようになります。しかし、このときは全然、炎症が治まりません。それでも、プロ野球のシーズンが開幕すると、万全な状態でないことはわかっていながら登板しました。ただ、登板後は朝起きたときに肩が上がらない状態で、病院に行ったら腱板断裂と診断されました」

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