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森本稀哲「引退試合の奇跡」を生んだ、プロ17年間の全力プレー (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro寺崎敦●取材協力 cooperation by Terasaki Atsushi

 森本は来日当初からメヒアの実力を見て、活躍を予感していたという。だが、ただ親しく接していただけではない。時には厳しく諭すこともあった。メヒアの来日1年目には、こんな言葉を掛けている。

「1年目に素晴らしい成績を残して、給料が上がって、日本の野球を舐め始めてダメになっていく外国人を、今まで自分はたくさん見てきた。日本の野球をリスペクトして、今の自分に満足せずにやり続ければ結果は残せるよ。今年の気持ちを忘れずに、日本で成功し続けてほしい」

 ところが、来日1年目に本塁打王を獲得したメヒアは、2年目に大幅に体重が増えた状態で来日する。森本は「だから言っただろ!」と崩れ落ちたという。2年目のメヒアは打率が大きく悪化し、本塁打も減り、苦しんだ。森本の言葉を大いに実感したシーズンだったに違いない。

 メヒアだけではない。森本は気になることがあれば、チームメイトひとりひとりに声を掛けた。若手のホープである森友哉には、凡退後に元気なくポジションに向かう態度を厳しく指摘した。すると森は、次の試合で凡退した後、「稀哲さん、見ててください」と告げ、ライトのポジションまでダッシュで向かったという。「かわいいところのあるヤツですよ」と森本は笑う。

「17年もやっているとね、怖いものは何もないんですよ。だから厳しいことも言ってきたつもりです」

 そして、森本がチームメイトから愛された何よりの理由、それは森本自身が常に試合も練習も全力を尽くしてきたからだろう。

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