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森本稀哲「引退試合の奇跡」を生んだ、プロ17年間の全力プレー (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro寺崎敦●取材協力 cooperation by Terasaki Atsushi

 1番の秋山翔吾がレフトへ二塁打を放ち、森本と同級生の渡辺直人が死球、浅村栄斗が内野安打と打線がつながる。森本が当初抱いていた「3人出てくれれば......」という願望は満たされた。だが、中村剛也が犠牲フライを放って一死一塁となり、続く5番のエルネスト・メヒアが初球のスライダーを引っかけ、サードゴロを打ってしまう。

 森本が思わず「あ~、何も考えてないんだろうな」と併殺打を覚悟したその刹那、一塁まで必死に走るメヒアの姿が見えた。森本は笑いながら述懐する。

「2年間やって、メヒアの全力疾走を見たのは初めてでしたよ」

 6番の栗山巧が何度もファウルで粘って四球を選び、打席に向かう頃には、森本の目からすでに涙がこぼれていた。

 現役最後の打席はあえなくサードゴロに終わったが、もはや結果は問題ではなかった。

「ライオンズっていうチームはね、バツグンに"お山の大将"が集まっているんですよ(笑)。野手は強烈だし、投手陣もなかなか独特なムードがあります。僕は、ライオンズがひとつになれればすぐに優勝できると思っているんですよ。最後にみんなの前でも言いました。『君らの力はすごい。個々の力を結集させてやってほしい』って。だって、ひとつになったときはソフトバンク相手にも簡単に勝っちゃうくらいなんだから。それにもかかわらず、ここ最近、優勝から遠ざかっている理由に気づいてほしいんです」

 森本が望んできた西武の「チーム一丸」は、皮肉にも森本の現役生活のフィナーレを前に実現した。

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