FA宣言→テスト入団。なぜ木村昇吾はハイリスクを選んだのか

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • photo by Kyodo News

 FA選手の入団会見は、キャンプ地の施設内で行なわれた。金屏風があるわけでも、無数のフラッシュがたかれるわけでもない。それでも西武に入団が決まった木村昇吾は笑顔だった。

「思い切って野球ができる幸せ、ありがたい気持ちでいっぱいです」

 過去に例を見ない、FA行使選手のテスト入団。木村はようやく3球団目のユニフォームに袖を通した。

テスト生として西武のキャンプに参加し、2月5日に正式契約となった木村昇吾テスト生として西武のキャンプに参加し、2月5日に正式契約となった木村昇吾

 昨年11月10日、広島の木村はFA権の行使を発表した。しかし、交渉期間になっても他球団からの連絡はなし。広島との契約が切れた12月からは練習場所もなく、広島市内のジムを拠点に、所属先も決まらないまま来季の準備に励んだ。

「自分を高めるために練習をする。やることは変わらない」

 毅然と話しながらも、不安は拭えない。後に、「あの頃が野球人生でいちばん不安だった」と当時の心境を吐露した。そんな木村に転機が訪れたのは、12月下旬。2月1日からの春季キャンプで西武の入団テストを受けることが決まった。

 キャンプでは、FA選手のプライドなど忘れたかのように、ひとりの野球人としてがむしゃらにプレー。うまくなりたいと思う気持ちは、入団時から今も変わらない。

 合格通知は予定よりも早く届いた。当初は10日までをテスト期間とされていたが、実力や野球に取り組む姿勢などが評価され、5日に正式に契約を結んだ。

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