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FA宣言→テスト入団。なぜ木村昇吾はハイリスクを選んだのか (4ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • photo by Kyodo News

 FA権を取得した年、球団は年俸面で最大限の敬意を払ってくれた。15年の推定年俸4200万円は、チームでは11番目。2015年に出場試合数が激減しても大幅ダウン提示はなかった。もちろん、広島というチームに愛着はある。選手として一人前に育ててもらい、多くの人間関係も築いた。でもどこかで、もうひとりの自分が訴えかけてきた。

「現状に甘えている自分がいるんとちゃうか? それって自分らしいの?」

 プロ入りしてから常に自分を奮い立たせ、向上心を持ってプレーしてきた。だからこそ、自分に嘘はつけなかった。

 西武とは前年の半額以下となる推定年俸2000万円(+出来高)で契約。今年1年だけの金銭価値で評価するなら、FA権行使は失敗と判断されるだろう。しかし、木村の声は弾んでいた。

「思ったより早く結果をいただいた。球団の方からは『ショートのレギュラーを獲れ』と言ってもらえた。うれしいよね。チャンスはあると思う」

 周りがなんと言おうと、自分が選んだ道に後悔はない。木村は背番号0から新天地で確かな一歩を踏み出した。シーズン後、周りの評価が一変している可能性もゼロではない。

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