「野球の素晴らしさを伝えたい」。野球ものまね芸人たちの矜持 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 ギターを抱えて酒場を回り、酔客のリクエストに応じて歌い、時には伴奏する「流し」。カラオケの浸透によって今や絶滅寸前とも言われているが、あの北島三郎も歌手としての出発点は「流し」だったという。

 ます似は言う。

「もともとは新橋で路上ライブをやっていました。新橋は野球ファンが多くてファウルチップ(投げ銭)を多くもらえることもありますし、メディアの方も多く来られるので、声を掛けていただくこともあるんです。リリーズさんには最初はお客として来たのですが、客層やお店の構造的にネタができそうだったので、高橋店長に『流しをやらせてもらっていいですか?』とお願いしました」

 この日は3連休明けの平日ということもあり、客の入りは15人ほど。ます似はテーブルを1つ1つ丁寧に回り、ベースボールカード風の名刺を配りながら、客にネタを見てもらう許可を得ていった。

 そして数分後。一度は店の奥に引っ込んだます似が、コンパクトな音響機器を片手に携え再び登場した。

「サンサンササン、サインはV~、Vは勝利だビクトリ~」

 音響機器から流れる出囃子は、かつての桑田真澄の応援歌。客の拍手と喝采に「えぇ、僕はほとんど出オチですんでね」と控えめに応えながら、ます似はネタを始めた。

「1994年日本シリーズ、清原和博選手と対戦した時に直球勝負以外のサインに首を振り続ける桑田真澄選手の首の傾きを再現します」

 ネタのタイトルを言っただけで、オーディエンスからは笑いが漏れる。このように桑田真澄のものまねネタを続々と披露(やたらと『首』関連のネタが多い)していくと、野球好きで占められた店内の笑い声は次第に大きくなっていった。

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