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「野球の素晴らしさを伝えたい」。野球ものまね芸人たちの矜持

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 東京で初雪が観測された1月12日の夜。寒空に包まれた神田駅近くの雑踏に、野球のユニフォームを着た2人組が立っていた。

 通りかかったサラリーマンの集団が「あれ、あんなところに巨人の選手がいる」と立ち止まると、帽子を目深にかぶった「背番号18」が、穏やかな声をあげた。

「野球居酒屋いかがでしょうか~。ただいまエキサイトシート空いていま~す」

流しの野球ものまね芸人、桑田ます似(写真左)と高橋よしのB流しの野球ものまね芸人、桑田ます似(写真左)と高橋よしのB

 そう言って背番号18は、「ベースボール居酒屋リリーズ 神田スタジアム」と印刷されたチラシをサラリーマンに手渡した。

 客引きをしているのは、かつて巨人のエースに君臨した桑田真澄......ではなく、ものまね芸人「桑田ます似」だった。その風貌はまさに本家とうりふたつ。口調、仕草、立ち姿まで、「桑田真澄」を忠実に再現している。

 ます似の隣では、「背番号24」がYG帽を夜空にかざしながらサラリーマンの歓声に応えていた。こちらは昨季限りで現役引退し、巨人の監督に就任したばかりの高橋由伸......ではなく、そっくりさんの「高橋よしのB」だった。

 彼らは酒場にやって来た「流しの野球ものまね芸人」である。

「去年の夏頃かなぁ。ます似さんから『今日、そちらでネタやっていいですか?』って電話があったのは。この21世紀にギターを持った『流し』だって見ないのに、それが野球芸人さんの『流し』ですからね。それから多いときで月に3、4回、店でネタをやっていますよ」(ベースボール居酒屋リリーズ・高橋雅光店長

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