2015.11.14

なんと6度目のトライアウト。大平成一を支える「鬼嫁」の愛

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 なぜ、彼がこれほどまでにトライアウトにこだわるのか、不思議でならなかった。

 大平成一、26歳――彼は今年、なんと6度目となる12球団合同トライアウトに挑戦した選手だ。

2008年から4年間、日本ハムでプレーした大平成一だが一軍出場は一度もなかった

 大平のことを知っているのは、よほど熱心な日本ハムファンか、コアな野球ファンくらいだろう。長崎・波佐見高3年時の2007年に高校生ドラフト4巡目で日本ハムに指名された左のスラッガー。いずれはドラフト1位の同期・中田翔と左右の大砲コンビに……。そんな期待をかけられていたはずだった。しかし、中田がレギュラーに定着した2011年、大平は一軍出場を果たせないまま戦力外通告を受ける。

 その年以降、大平は毎年のようにトライアウトを受けるため、会場に足を運んでいる。もちろん、回数が多いからといって賞賛されるべきことではない。しかし、想像してみてほしい。自身への希望を抱いて1年かけて準備して、人生を賭して受験しているのに、どの球団からも連絡が来ない。それを5回も繰り返しているのだ。6回目のトライアウトに挑むには、挫けそうになる自分を奮い立たせるような、心身のエネルギーが必要に違いない――。

 しかし、11月10日のトライアウトを終えて私服に着替えた大平を直撃すると、思いがけない言葉が返ってきた。

「えっ、僕、そんなに受けてます?」