かつての剛腕3人の光と影。トライアウトで見た「帝京魂」
光が強ければ強いほど、影が濃くなる――。そんな使い古された言い回しが、どうしても12球団合同トライアウトにはまとわりついてしまう。
「まだオレはやれる」とぎらついた光を放つ選手がいる一方で、かつての華々しいプレーがまるで幻だったかのように影を落とす選手もいる。なかには自分のメカニズムを忘れてしまったのか、ぎこちない動きでボールを投げる選手もいる。弱肉強食のプロの世界、力のない者はただ去るしかない。ちょっとした歯車のズレでパフォーマンスに大きな支障をきたす、人間のはかなさを感じてしまう。
トライアウトでは打者3人を無安打に抑えた伊藤拓郎
今年のトライアウトには、「東の横綱」と呼ばれる東京の名門・帝京高校出身の投手が3人も参加していた。上野大樹(前・ロッテ/29歳)、大田阿斗里(前・DeNA/26歳)、伊藤拓郎(元・DeNA、現・群馬ダイヤモンドペガサス/22歳)だ。
3人とも右の本格派として、将来を嘱望された逸材だった。彼らはそれぞれどのような経緯でトライアウトを受けるに至り、またどのような結果を残したのか。3投手のケースを通して、改めてプロ野球の厳しさに触れてみたい。
この日、3人のなかで最初に登板したのは上野だった。帝京高時代に甲子園登板経験はなかったが、東洋大を経て2008年にドラフト3位でプロ入り。1年目から一軍に登板し、3年目の2011年には主に先発投手として4勝(7敗)をマークした。5年目の2013年にはリリーフに定着、42試合に登板して3勝0敗、防御率3.06と活躍していた。
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