かつての剛腕3人の光と影。トライアウトで見た「帝京魂」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 だが、今季は一軍登板わずか2試合にとどまり、戦力外通告を受けた。トライアウトでは自身のアピールポイントとして、「ボールのキレと球種ひとつひとつのコントロールの良さ」を挙げており、実力の健在ぶりを訴えていた。

 実際に、トライアウトのマウンドに立った上野のボールは悪くないように見えた。常時140キロ前後のストレートは捕手のミットを小気味よく叩き、スライダー、カーブでも有効にカウントを取れるコントロールがあった。

 しかし、せっかく打者を2ストライクまで追い込んでも、上野には決め球がなかった。この日は原大輝(前・オリックス育成)、中村憲(前・広島)に対して、2ストライクと追い込んでから、ともにヒットを浴びた。いよいよ後がなくなった3人目の打者・白根尚貴(前・ソフトバンク育成)にも143キロのストレートをしっかりとらえられ、右中間突破のスリーベース。打者3人に対して3安打という最悪の結果に終わってしまった。

 整った投球フォームで「正統派右腕」と呼ぶべき上野だが、プロでは似たようなタイプの投手が多く、よほど爆発的な力がない限り「ありふれた投手」になってしまう。制球力もまずまずなだけに、打者に脅威を与えることができない。だが、前述したようにボール自体は「プロのキレ」を持っていた。結果は残せなかったとはいえ、このまま去るには惜しい人材だ。

 帝京トリオの2番手で登場したのは、剛腕・大田阿斗里だった。2007年春のセンバツでの快投は今でも忘れられない。初戦の小城高戦で20奪三振をマーク。これは作新学院高・江川卓(元・巨人ほか)と並ぶ歴代2位記録だった。しかし、夏の甲子園ではフォームを崩してエースの座を垣ヶ原達也(現・日立製作所)に譲り、登板機会はほとんどなかった。

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