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難病からの完全復活。ソフトバンク大隣憲司物語 (3ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 その後も懸命にリハビリに耐え、再び一軍のマウンドに上がったのは、2014年の7月13日。この時は1イニングだけの登板だったが、復帰2戦目となった7月27日のオリックスでは先発し、7回を3安打1失点に抑える好投を披露。プロ野球界で初めてこの病気から復帰して白星を挙げた投手となった。シーズン終盤にはチームの大事な試合で先発を任され、その期待にすべて好投で応えてみせた。

 リーグ優勝を決めた10月2日のオリックス戦では6回を無失点に抑え、クライマックス・シリーズでも第1戦と第6戦に先発して、安定感のある投球でチームを勝利に導いた。阪神との日本シリーズでは1勝1敗で迎えた第3戦に登板し、7回を3安打無失点で勝利に貢献。大隣の好投で勢いに乗ったチームは3連勝して悲願の頂点に立った。

「昨年の10月は中身が濃すぎるほどの1カ月。自分でも怖いと思ったくらいです。だって、思ったところにボールが行くんですから。正直、昨年の自分はまだ発展途上というか、状態を戻している途中だと考えていました。もともとコントロールは特別いい方ではないし、二軍で調整している時もあんな感覚で投げたことはありませんでした。もちろん、気持ちの入り方や集中力に違いはありますが……」

 だから、今シーズンを迎えるにあたって大隣は「昨年は特別だから、その時の自分は追いかけない」と決めていた。だが今シーズンも、開幕からのピッチングを見れば、昨年の10月に匹敵するといっても過言ではない内容の投球を見せている。

 大隣が勝ち続ける要因は何か。そこに今江が言う「速くない真っすぐ」と「インコース」というふたつのキーワードが浮上してくる。

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