開幕ローテへ。
斎藤佑樹がイチローとの秘密練習でつかんだ感覚
思い通りのところへ、まったくコントロールできない。
2月14日、沖縄・名護で行なわれたベイスターズとの練習試合。
プロ5年目を迎えた斎藤佑樹
6回から4番手として登板したファイターズの斎藤佑樹は、キャッチャーの石川亮が構え続けた右バッターのアウトローへ、一球もストライクを投げることができなかった。逆球が目立ち、ことごとく高めに浮く。3イニングスを投げて被安打4、失点2という結果以上に、内容が伴わない39球――ストレートの手応えを試したいと変化球を封印して臨んだ一戦ではあったが、肝心のストレートをここまで操れないとなれば変化球を駆使するしかなくなる。2点目を失ってからの斎藤は、緩急を使って打者5人をノーヒットに抑えたものの、わずか2日前に投げていたボールとはあまりに違っていた。
その2日前、2月12日の名護。
この日、自ら志願してバッティングピッチャーを務めた斎藤は、本球場で30球を投げ終えて、小走りにサブグラウンドへやってきた。いつもならアイシングのためにプレハブのトレーナー室へ戻るところなのだが、この日は一目散にブルペンへと駆け込む。30球では投げ足りなかったのか、もう一度、ピッチングを始めたのだ。
そしてひとり、斎藤が投げ始める。
静かなブルペンに、キャッチャーミットを弾く音が響く。その初球、ボールを受けていたブルペンキャッチャーが思わず、「おっ」と声を上げた。すかさず厚澤和幸ピッチングコーチが斎藤に声を掛ける。
「佑樹、BP(バッティング練習)はどうだったんだ」
斎藤が生真面目に応える。
「よかったです」
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