開幕ローテへ。
斎藤佑樹がイチローとの秘密練習でつかんだ感覚 (4ページ目)
これはいいな。
そう思って続けていたら、もっといいものが見つかる。
そして気づく。
そうか……これはいいと思っていたけど、ベストじゃなかったのか。
斎藤の4年間はその繰り返しだった。しかも、いいフォームで投げられたからといって勝てるとは限らない。さらに言えば、勝ったからといって、いいフォームだとも限らない。
しかし、勝てばそのフォームは間違いなく讃えられる。要はいいとか悪いとかいう正解のない評価に、客観的な根拠など存在しないということだ。
ならば、結果を出すしかない。
2月9日の名護。
ブルペンでのピッチングを終えた斎藤は、まだ興奮していた。
「真っすぐ、よかったです」
斎藤は嬉しそうに続けた。
「今日は力を抜いて、コントロールとキレを意識して投げました。今までは力を入れれば強い真っすぐが投げられていたんですけど、今日は力を抜いてもそういう真っすぐが投げられた。狙った通り、強い球が低いところに決まっていたんです。今日の真っすぐ、よかったです……」
誰もが疑心暗鬼の目を向ける中、斎藤は自分を信じて開幕を見据える。過度な注目もされず、ハードルを極端に高く設定されることもなく、斎藤は静かなキャンプを送っている。そこで目指すフォームを固め、甘くてもファウルになるだけの強さを伴ったストレートにも辿り着いている。
しかしながら、開幕一軍、5番目までのローテーションの座をつかみ取るためには、これからのオープン戦で周りが黙るだけの結果を出すしかない。ブルペンでどれほど見栄えのいいボールを投げても、残念ながら今までの斎藤では説得力を欠く。
だから、難しい。
だから、厳しい。
差し馬には、あえて後方に位置取りをするだけの覚悟が求められる。そのことを斎藤は今、改めて実感しているに違いない。
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