楽天のルーキー・安樂智大が松井裕樹に見せた「裏の顔」 (2ページ目)

  • 穂積健太郎●文 text by Hozumi Kentaro
  • photo by Nikkan sports

 安樂の獲得調査に尽力してきた山下勝己スカウトはこの発言に、「彼らしいですね」と頷(うなず)く。

「彼は本当に頭のいい選手。彼自身、自分が育成の対象であることは十分承知しているが、あえて高い目標を公言しているんです。プロである以上、一軍で活躍してナンボ。『1年目は二軍で鍛えられればいい』というのは周囲の評価であって、自分で決めることではない。そういうことを理解しているんです」

 また、安樂はブルペンで投球練習を行なう際、捕手を「座らせる」とは言わない。「捕っていただくのは目上の方ばかりです。『させる』という言い方は丁寧ではないので『座っていただく』といつも言っています」と言う。まだ高校卒業前の18歳とは思えない思慮深さと振る舞い。安樂が見せているのは大人の顔だ。

 だが、2013年の18Uワールドカップのチームメイトで、このキャンプでは安樂の教育係に任命された松井裕は、「アイツは本当に隙がないですね。取材していても分かるでしょう? なかなか本性を出さない。でも、実際は僕のことメチャメチャなめていますからね」と、後輩の"裏の顔"の存在を暴露した。

 キャンプ初日の練習後、安樂と松井裕が並んで宿舎へ帰る車に向かっていた時のことだ。この日は風が強く、上着なしでは肌寒かった。

安樂「あー、寒い寒い。(松井)裕樹さん、長袖いらんとか言って、ウソばっかりじゃないですか! ひどいわ、ホンマ」

松井裕「いや、だから去年は暑かったんだって。オレだって2年目なんだよ! そもそも球場に持ってきてないっておかしいだろ! 沖縄だからってまだ2月だぞ」

 目の前で繰り広げられたいまどきの10代らしい掛け合いに、報道陣やファンは爆笑。さらに、バッグからスマートフォンを取り出し、地元の友達と連絡を取り合うという、18歳らしい一面を見せた。

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