敗れて強し。日本ハムが貫いた奔放かつ緻密な野球 (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by NIkkan sports

 とはいえ、ファイターズはリーグチャンピオンを十分、苦しめた。

 栗山監督は、このCSの1試合は1カ月のキャンプよりも野球が上手くなると言った。そんなシビれる舞台を9試合も経験したのだから、選手たちは10日間で10年分のキャンプを過ごしたことになる。1年前の宮崎での試合には、大谷、上沢だけでなく、西川も中島も、近藤健介もいた。そんな彼らをレギュラーとして使い、ここまで育て上げ、あと一歩までホークスを追い詰めた栗山監督は、敗れた直後、こう言った。

「勝ち切って、いいCSだったと言いたかったけど、来年の今頃、去年が生きたと笑えるようにしっかりやります。よく粘ったと言ってもらえるのが一番嬉しいし、これがファイターズの野球なんです」

 さわやかにそう言って、球場を後にした指揮官。しかしながらおそらく深夜、福岡のホテルでひとりになった途端、誰よりも悔しがり、頭をかきむしり、眠れない一夜を過ごしたに違いない。

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