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敗れて強し。日本ハムが貫いた奔放かつ緻密な野球 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by NIkkan sports

 つまりは、すべての戦術に指揮官なりの明確な理由があった。そして、明確に説明できるのが栗山監督だ。

 負けたら終わりの最後の2試合、栗山監督が命運を託した先発ピッチャーは、ともに20歳の大谷と上沢直之だった。

 ちょうど1年前のこと。

 去年の10月19日、大谷と上沢は宮崎にいた。

ホークスが秋と春にキャンプを張るアイビースタジアムの隣にある、生目(いきめ)の杜第2野球場。ここでこの日、フェニックス・リーグのゲームが行なわれていた。四国アイランドリーグ・プラスの選抜チームを相手に先発としてマウンドへ上がったのが大谷、3番手として試合を締めくくったのが上沢だった。

 プロ1年目を終えたばかりの大谷は、この宮崎で初めての中6日を体験しているところだった。上沢はプロ2年目、ファームで先発ローテーションの一角を担ったものの、まだ一軍での登板は一度もなかった。

 そんなふたりが、そのわずか1年後、CSのファースト・ステージで初戦と第2戦の先発を任され、ファイナル・ステージでは第5戦と最終戦を任される。

 普通に考えれば、あり得ない話だと思う。

 大谷を第5戦に送り出す試合前、栗山監督は言った。

「今年のキャンプ初日のピッチングを見れば、まさか大谷と上沢が最後に行くなんて、誰も思わなかったでしょ。この大事な試合に頭から行くんだから、逃げてほしくない。正々堂々、投げてほしいよね」

 今年の2月1日、大谷はキャンプ初日のブルペンで、とんでもなく酷い内容のピッチングを披露して、指揮官を愕然とさせた。栗山監督がそのときのことを、こう振り返る。

「いやぁ、悪かったよ。あの初日、あまりにも翔平のフォームが悪過ぎて、思わず、オフの間にデカくした体のせいにまでしたもんね(苦笑)。あの日はホント、命取られるかと思うくらい心配したけど、でもそのおかげでシーズン中、どんなことがあっても『あのキャンプ初日に比べれば』と思えたから、あれも逆に考えればよかったのかもね(笑)」

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