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首位奪取へ。矢野、下柳、藪が叫ぶ「阪神投手陣再建論」 (3ページ目)

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 なぜ、東京ドームだと「ツイていない」のか。それは、球場別の1試合平均本塁打数を比べてみれば分かる。昨季、東京ドームは1.42本。甲子園(0.63)やナゴヤドーム(0.49)の倍以上の確率で、ホームランが出ていたことになる。阪神の場合、その東京ドームで開幕を迎え、2カード目は京セラドーム(1.20)、さらに、3カード目は神宮(1.45)と、ホームランの出やすい球場ばかりを転戦していたのだ。

「なぜ、開幕前に検査をやらないのか。オープン戦のときに検査して、こういうボールでやりますよ、と報告があれば、まだ対処できる。それを、開幕してから『実は飛ぶボールでした』って。ピッチャーにとっては死活問題。外野フライでチェンジのはずが、ホームランになって点を取られるんですから。去年、あれだけのことがあって(統一球の反発係数が極秘裏に上げられていた)、チェックできなかったNPBもどうかと思いますけどね。選手をないがしろにし過ぎです」(下柳氏)

 下柳氏は投手出身者として憤りを隠せない。下柳氏の言うように、今季の阪神投手陣は与四球が多い。84個はリーグ5位。昨季の400個はリーグ最少だったから、チーム防御率とリンクしているといえるだろう。もちろん、慎重になるべきところ、出してもいい四球もある。ただ、「今年は無駄なフォアボールが多過ぎる」と、3氏は口をそろえた。

「フォアボールが多いのは怖さの裏返し。でも、打線がこれだけ打ってくれるんですから、もっと思い切って投げればいいと思いますよ。僕らの時は、『点を取れないから、前半はゼロに抑えてくれ』と言われましたけど、今は1、2点やってもいい。僕がコーチの時に言っていたのは、①ストライクを投げなさい、②ストライクゾーンの中でスピードの変化をつけなさい、③ダラダラ投げるな、④野手を使え。この4つです。状況にもよりますけど、ランナーがいないときはどんどんストライクを取っていかないと、試合が進みません。それができれば、球速がなくても岩崎(優)のように抑えられるんです」(藪氏)

「フォアボールでは何も起こらない。前に飛べば、野手の正面に行くかもしれないし、もし打たれたとしても、向かって行く姿勢が見えれば、野手も『何とか守ってやろう』という気持ちになって、ファインプレイも出やすいでしょう。勇気を持ってバッターに向かって行ってほしいですよね。これは先発、リリーフどちらにも言えること。特に走者のいる場面で行くリリーフは、『このランナーはオレが出したんじゃない。関係ない』くらいの気持ちで。一度、火のついた打線を止めるのは大変ですけど、だからこそ、向かって行くしかない。逃げれば逃げただけ追いかけられるんです。もし、ストライクが入らないと言うなら、もっと練習しろ!」(下柳氏)

 藪、下柳の両氏は、打線の援護に恵まれない試合も多く経験しているだけに、「今みたいに打ってくれたら、もっと勝てた」と苦笑する。そして矢野氏は、四球減にチーム全体で取り組むべきだと言った。

「チームとして“合言葉”じゃないけれど、『フォアボールを減らそう!』というのを、もっと徹底しないと。抑える、打たれる、という結果は必ず出る。その結果を投げる前に考えると怖くなってしまうので、勝負する意識を、チームの中にもっともっと植え付けないといけません。ここまではどっちつかず。打たれるのも怖いし、カウントが悪くなったら、ある程度のゾーンに投げないといけないし……という悪循環になっています。気持ちの部分だけでもどんどん攻めて行かないと、変わらないと思いますね」

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