黄金ルーキーの実力は本物か? 解説者7人が見た楽天・松井裕樹 (3ページ目)
◎金村義明(元近鉄ほか)
「僕のイメージは、入団した頃の工藤公康(当時西武)。とにかく腕の振りが素晴らしいから、変化球の曲がりがハンパない。これは努力してできることではない。才能でしょう。今、楽天の首脳陣はファームでじっくり育てるか、それとも一軍で投げさせて経験を積ませるかで迷っていると思いますが、僕は一軍で経験を積ませた方がいいと思います。いい緊張感の中で投げることで本当のスタミナがつくと思いますし、一軍の打者を相手に投げることで技術を学んでいけるからです。おそらく星野監督なら、一軍で使うと思うんですけどね。普通に1年間投げることができれば、8勝はすると思います。運がよければ、2ケタもあるでしょう。それだけの力は十分に持っています」
◎飯田哲也(元ヤクルトコーチ)
「ストレートとスライダーを中心に腕を思い切り振って投げ込む姿は、ヤクルト時代の石井一久を思い出します。バッターからすると、あれだけ腕を振って投げられるのは本当に脅威です。腕を振られると、タイミングも取りづらいし、ボールの見極めも難しくなる。よくボール球の変化球に空振りするバッターを見ると思いますが、あれはストレートと思って振りにいくからなんです。それでいて、変化球のキレも抜群ですからね。非常に攻略が難しい投手だと思います。ただひとつ、心配なことを挙げるとすれば、彼の精神面。特に彼の場合、気持ちを全面に出して投げるタイプ。それ自体はいいことだと思うのですが、派手なガッツポーズをしたり、マウンドで何度も吠(ほ)えたりすると、相手チームも『なんだ、アイツは』となってしまう。プロの世界って、そういうのに敏感に反応するんです。何とか松井を攻略しようと、チーム全体で攻めてきます。その時に、冷静なピッチングができるかどうかでしょうね。喜怒哀楽を出すことは大事ですが、マウンドの上ではあまり出さない方がいいでしょうね。とはいえ、才能は素晴らしいものを持っています。2ケタ近くは普通に勝つと思いますけどね」
誰ひとりとして、松井の開幕ローテーション入りを疑うものはいなかった。投げる球はもちろん、精神的な強さを賞賛する解説者もいた。そして何より、1年を通して、一軍での経験をステップに伸びていけるタイプだからだろう。これは田中将大(ヤンキース)や藤浪晋太郎(阪神)と同じ器を持っていると言ってもいい。
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