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菊池雄星「ピッチングの『教科書』は捨てました」

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

前半戦で9勝を挙げるなど、4年目の今季ブレイクを果たした菊池雄星前半戦で9勝を挙げるなど、4年目の今季ブレイクを果たした菊池雄星 埼玉西武ライオンズの菊池雄星には今季、是が非でも結果を残さなければならない理由がある。それは、彼がプロ入り4年目を迎えているということだ。堅い決意で臨んだ今季は開幕から先発ローテーションに入り、シーズン前半戦にして9勝をマーク、防御率はリーグ2位の1.58。花巻東高校時代、考えることで進化してきた"怪物"は今季、これまでの"教科書"をあえて捨てたことで、「20年にひとりの逸材」と言われた才能を花開かせつつある――。

―― 6月27日に県営大宮球場で行なわれた試合前、十亀剣投手と一緒に前乗りで札幌に移動していく表情を見て、「人生が充実している人の顔だな」という印象を受けました。実際、どうですか?

菊池 一軍のピッチャーの中では一番年下なので、からかわれることも多いんですよね(笑)。優しい先輩たちにかわいがってもらっているから、そういう表情になったのかな。そもそも野球が楽しいし、好きなので。打たれようが、勝とうが、負けようが、野球が好きという気持ちを常に持っています。

―― あえてストレートに聞きます。今年、ここまで勝てている一番の要因は?

菊池 うーん、どうなんでしょうね......。あまり、目標を持たなくなったのが一番大きいと思います。

―― 目標を持たなくなった?

菊池 一瞬や1日、目の前の試合や1球を楽しんで、大事に投げる。今年はその積み重ねでここまで来ました。去年までは「何勝しなきゃいけない」という気持ちがあったんですけど、今はないんです。結果にこだわりすぎると、楽しめない。だって、結果はコントロールできないじゃないですか。コントロールできるのは自分だけなので、自分の球を投げて、打たれたらしょうがない。逆に、自分のピッチングをできずに勝っても面白くない。自分のピッチングをできて負けたら、それでいいなと思えるようになって。勝ち負けじゃなくて、自分自身と向き合えています。

―― 今季からチェンジアップを投げ始めましたよね。シーズン初登板となった3月30日の日本ハム戦の後、「厳しい場面でチェンジアップを投げていくことで、自信に変わっていくと思う」と話していました。現在はどうですか?

菊池 勝負球にも使えていると思います。苦しいときに使うからこそ、自信になっているのかな。最初は二死ランナーなしの場面だけ、とかだったんですけど。

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