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涌井秀章とダルビッシュ有は、なぜここまで差がついたのか? (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • 小内慎司●写真 photo by Kouchi Shinji

 涌井の特長としてよく挙げられているのが、リリースポイントが打者に近く、理にかなったフォームでボールに力をうまく伝えている点だ。だが、プロ入りして9年のキャリアを重ねる過程で、微妙なズレが出てきたと与田氏は言う。

「気になるのはフォーム。年齢的なことも含めて、以前より柔らかさがなくなってきた感じがします。涌井は体全体を柔らかく使い、リリースの瞬間、指先に力を入れるピッチャー。ただ、ここ数年は下半身がうまく使えず、上半身だけで投げている印象があります。だから、いい球がいかない」

 そして先発復帰が決まっていた今季。3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表の投手コーチとして参加していた与田氏は大会期間中、涌井と試行錯誤を繰り返していたという。

「涌井は普通の投手よりも踏み出す時の歩幅が広い。今の体の状態で、本当にその投げ方でいいのか。そこで彼と相談して、歩幅を狭めるなど、いろんなことを試しました。特に春先は体が硬くなってしまうので、下半身のバランスを重視しないと上半身に余計な負荷がかかってしまいケガにつながる。とにかく、下半身主導のピッチングフォームに取り組みました」

 しかし、投球内容は改善されなかった。先発として今季初登板から3連勝を飾ったものの、ストレートはシュート回転し、チェンジアップやスライダーは抜けるボールが目立った。スタミナに定評のある涌井だが、4月18日のオリックス戦から4試合連続して6回途中に降板。5月19日の阪神戦では3回でマウンドを降り、渡辺監督は「今の姿が涌井の実力かな」と中継ぎへの配置転換を決めた。実はこの起用法も、涌井が不振から抜け出せないひとつの理由だと、与田氏は言う。

「チームとしては涌井の状態を良くするための配置転換だったと思うのですが、コンディション面を考えると、ひとつのポジションでしっかり専念できるほうがいい」

 二軍で先発調整させる選択肢もあっただろう。しかし、渡辺監督は中継ぎからの復調を促した。ブルペン陣が手薄というチーム事情もある。何より指揮官の頭には、前年のイメージがあったのではないだろうか。

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