涌井秀章とダルビッシュ有は、なぜここまで差がついたのか? (3ページ目)
昨年、シーズン途中にクローザーへ配置転換された涌井は、ストレートの球威を取り戻しつつあった。ロッテの井口資仁は7月下旬、「ストッパーになりたての頃とは、真っすぐのキレが違いました」と話していた。変化球のコントロールに苦しむ一方、ストレートで押す力強さがあった。その結果、リーグ2位となる30セーブを記録した。
今季も苦しむ一方で、少しずつではあるが明るい兆しも見えていた。
「WBCの間にめざましい変化は起こりませんでしたが、いいものをつかみかけていたんです。元々、上半身の使い方がとても器用なピッチャーで、バランスのいいフォームさえ取り戻せば、また以前の涌井に戻れるはずです」(与田氏)
涌井自身も手応えを感じていた。542日ぶりに先発として勝利を飾ったソフトバンク戦(4月4日)のあと、こう明かしている。
「カーブは良かったけど、腕を振ったときに抜ける球がありました。でも、投げているなかで『これか』というのを見つけて、それから安定し出した。これから1年先発をやるなか、無駄な球をなくし、決め球が必要。次回、しっかりやるだけです。去年、後ろ(リリーフ)に回って、今年は先発で一からやり直しです」
横浜高校時代からエースを張ってきた男は、まっさらなマウンドに特別の気持ちを持っている。
「もともと先発しかできない人間と思っていました。先発をできなくなったら終わりと思って、プロに入ってきましたから......」
渡辺監督は才能を見込み、「スーパーエースになれ」と叱咤し続けた。ダルビッシュは涌井を唯一無二のライバルと認め、切磋琢磨しながら成長してきた。どんなピンチであろうとポーカーフェイスを崩さず、キレのあるストレートと多彩な変化球で打ち取ってきた涌井。彼の復活を多くの者が待ち望んでいる。
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