【WBC】侍ジャパン2009藤川球児「新球に懸けた思い」 (3ページ目)

  • 木村公一●取材・文 text by Kimura Koichi
  • photo byTaguchi Yukihito

「キューバの打者なんて、日本の打者とはまったく違うバットの出し方をするでしょ。見送ったと思った途端、いきなり振り出して、それでキッチリ球をとらえてヒットにしてくる。投手でもそうです。上から投げていたヤツが、急に横から投げてみたり。メチャメチャ球を動かすことも、最初に見たときは驚きであり新鮮に映りましたね。僕らは子どものころから、いかにきれいな回転で投げるかばかり教わってきましたから」

 日本で野球をやってきただけの者にとっては、常識外れのプレイをして、なおかつ強さを示す。

「そうした野球と接することは、自分にとっても大いに吸収する部分でもあるんですよ」

 だからか、この大会で藤川は日本では見せない別の相貌(そうぼう)を、わずかながらものぞかせた。

 3月15日、第2ラウンド初戦のキューバ戦では、3番・セペタの初球にカーブを投じてみせた。得点は6-0。点差が開いているとはいえ、一球の投げミスも許されない役割で、藤川はストレートではなくカーブを選択した。ストレートをより速く見せるためのカーブ。

 結果、その打席では二塁打を許すが、後続を2者連続で三振に仕留める伏線にできた。

「キューバの打者相手に、ああいう投げ方ができたというのも、自分にとってはひとつの収穫なんですよ」

 球種そのものにも、今大会では「挑戦」があった。

 藤川の持ち球は、浮き上がるほどにキレのあるストレートと、フォークにカーブ。そこに、この大会限定用としてツーシームとシュートを加えた。17日、第2ラウンドの最終戦、韓国相手に6-2でリードした最終回での登板で、藤川は初めてツーシームとシュートを試投した。

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