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【WBC】侍ジャパン2009
中島裕之「清原が後継者と認めた男」 (3ページ目)

  • 石塚隆●取材・文 text by Ishizuka Takashi
  • photo byTaguchi Yukihito

 涙をためても挑発的な中島の目が忘れられない

「あのバントはヒヤヒヤでした」

 こう苦笑まじりに語るのは、04年から一昨年(注・2007年)まで西武のヘッドコーチを務め、これまでに指導した清原氏や松井稼頭央らと同様、中島にプロの技術と姿勢を植え付けた土井正博氏である。第1ラウンド2度めの韓国戦、1点ビハインドにより強攻も考えられた8回1死一塁の場面、中島はぎこちなくもピッチャー前へバントを成功させた。賛否両論あったバント指令はともかく、中島のそのプレイに土井氏は及第点をつけた。

「以前は本当にバントがヘタでね。まあ、実戦でやってない割には、巧くこなしましたね。これは西武の伝統なんだけど、『何はなくともチームプレイが絶対』。あの清原でさえ、基本は自分を犠牲にするチームバッティングでした。その代わり、サインが出ないときは、好きなように大胆にやればいい。だから中島も、抵抗なく2番という役割に挑めたと思いますよ」

 また、今大会の打撃好調の要因は、堅実な捕球に送球、ベースカバーなど澱(よど)みなくこなしていた、守備の安定にあるという。

「ショートには川崎(宗則)という中島より守備の巧い選手がライバルにいるわけだから、レギュラーとして出るには、打力で差をつけなきゃいけない。その点においては、とにかく守備が良くなって、バッティングに余裕ができた。心のゆとりが打席での視野を広くするんです」

 そして、土井氏もまた、中島のハートの強さが現在の結果につながっているとも言う。

「私は、中島を精神的にも育てようと人一倍厳しく接したんです。試合後はいつも叱(しか)り、普通の選手ならシュンとしてしまうところを、中島は目に涙をため、まるで挑むように見つめてくる。あの視線は、今思い出してもゾクゾクするほど」

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