【プロ野球】吉井理人「斎藤佑樹は二軍に落とすべきではなかった」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

―― そして開幕投手は2年目の斎藤投手でした。

「キャンプ前の1月のスタッフミーティングで監督の方から『開幕は斎藤で考えている』と言われました。正直、開幕は誰でもいいと思っていました。エースは武田勝じゃないのか、という意見もありましたが、彼はダルビッシュが抜けたことで押し出される形でエースと呼ばれるようになっただけで、開幕の時点でエースはいませんでした。だから佑ちゃんでもいいんじゃないかと思っていました」

―― ただ、キャンプ、オープン戦となかなか結果が出ませんでした。不安はありませんでしたか?

「昨年1年間見てきて、佑ちゃんが成長していることは知っていました。確かに結果は出ていませんでしたが、ふたりで取り組んでいたことも少しずつ形になりはじめていましたし、周りが思うほど心配はしていなかったですよ」

―― 具体的にどのような取り組みを?

「佑ちゃんの野球人生の中で、絶好調だった時の感覚を早く取り戻させてあげたかったんです。いちばんよかったのは、やはり高校3年の時ですよね。その頃より頭と体は成長しているはずなのに結果が出ないということは、どこかで感覚がずれているんです。いちばん取り組んだのは、立ってからボールを投げにいくまでの始動の部分です。そこを何度も繰り返し練習しました。そこがスムーズにいけば、いい感覚で投げることができるんじゃないかと」

―― 西武との開幕戦でプロ完投勝利を飾り、4月20日のオリックス戦ではプロ初完封。順調なスタートを切った斎藤投手ですが、6月6日の広島戦を最後に勝利から見放されました。吉井さんから見て、何が原因だったと思いますか。

「開幕から順調に勝利を重ねて、その状態を保ちたいという気持ちが強すぎたんです。だから、ピッチングの中で冒険ができなくなってしまった。もっと大胆に攻めてもいいのに小さいピッチングになって、打たれたくないばかりにコーナーを狙いすぎてストライクが入らなくなる。まさにそんな悪循環でした」

―― 斎藤投手自身、5月12日の函館での西武戦(2回途中9失点)で自信を失ったということを言っていましたが......。

「これまで佑ちゃんの野球人生で、あれだけ恥ずかしいピッチングをしたのは初めてだったと思うんです。それを受け入れられなかったんでしょうね。うまく切り替えることができなかった。プロ野球は長丁場の戦いなので、ああいう試合があっても不思議ではないんです。たとえとして不適切かもしれませんが、散歩をしていて犬のうんこを踏んでしまったぐらいの気持ちでいけばよかったんです。その部分はよく話をしたのですが、いろいろと考えてしまったんでしょうね」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る