【プロ野球】長引いた二軍生活のワケ。斎藤佑樹の歯車を狂わせた「テーマ」と「結果」
プロ2年目の今シーズンは5勝8敗、防御率3.98という結果に終わった斎藤佑樹 厳しかった夏がウソのようだ。
2012年10月16日。
リーグ制覇を成し遂げたファイターズと、ファーストステージを勝ち上がったホークスによる、クライマックス・シリーズ(CS)のファイナルステージ。その開幕前日、斎藤佑樹は札幌から遠く離れた宮崎にいた。この日、フェニックス・リーグのタイガース戦で先発として2イニングスを投げる予定だった斎藤は、いつものように試合前、グラウンドに出てキャッチボールを始めた。
古ぼけた野球場。
10人あまりのグラウンドキーパーが内野の土を馴(な)らしている。かつてジャイアンツがキャンプのメイン球場として使っていたひむかスタジアムは、名前こそ変わったものの当時のままだ。レフトのあたりでキャッチボールをする斎藤を、三塁側のスタンドで見つめる観客もまた、10名あまり。
どんよりした低い雲が、さらなる寂(さび)れた空気を醸(かも)し出す。
晴れると陽射しがきつくて暑い宮崎も、ひとたび雲が太陽を隠すと、突然、寒くなる。まして風が強く、霧雨が舞おうものなら、体感温度はさらに下がる。しかし、斎藤にとって、8月以降、酷暑のイースタン・リーグで投げ続けてきたことを思えば、むしろ心地よく感じる寒さなのではないかと想像してしまう。タイガースを相手に2回を投げて自己最速の147キロを記録した斎藤は、その日のうちに宮崎を離れ、バックアップピッチャーとして一軍に合流した。クライマックスシリーズから日本シリーズへ、当面のベンチ入りはないものの、いざというケースに備えることになっている。
それにしても、暑い2カ月だった。
思えばオールスター明けの7月29日、大阪でのバファローズ戦で先発した斎藤は、4回、3連打を浴びて、53球でノックアウトされてしまった。試合後、栗山英樹監督は斎藤に二軍行きを通告する。取り囲んだ報道陣に、栗山監督はこう言っていた。
「勝負事なんで、他のピッチャーの気持ち、チーム事情、佑樹の気持ちも考えて、こっちの想いだけではうまくいかないこともある。いろんな意味で今年1年間を大きなものにしてあげたいという気持ちは変わっていない」
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