【プロ野球】コンスタントに仕事をこなす広島・今村猛は真のプロフェッショナルだ
7月31日の横浜DeNA戦で、24試合連続無失点の球団記録を達成した今村 安倍昌彦の投魂受けて~第25回 今村猛(広島)
遠くからはるばるやって来た取材者を満面の笑みで出迎える。そういう如才(じょさい)ないタイプじゃなかった。
長崎空港から高速を走り、佐世保の街を抜けてさらに小1時間。山の中に今村猛の母校・清峰高校がある。
2009年のドラフト3日前。優勝した春のセンバツ前に続いて、2回目の取材だった。
「8カ月ぶり、久しぶりだなぁ」と声を掛けたら、「いやぁ、そんなにはならんでしょ」と長崎の言葉でビシッと返された。彼のグラブに縫い込まれた「九州男児」の太い文字。こういう時代に、こんなヤツもいるんだ。妙に新鮮な衝撃を受けたものだった。
センバツ前に会った時、「ドラフトで指名されなかったら、高校で野球を辞めようと思ってるんで......」と、今村ははっきりそう言った。
その思いを確かめると、「あの時に言ったことは本当ですし、その気持ちは今も変わっていません」と即答した。
状況から考えれば、ドラフト指名は確実。さらに「1位重複指名」の可能性もあった。だから、高校卒業と同時に野球を辞めることなどあり得ないのだが、彼の「決意」を聞かされた時は、正直、自分の息子でもないのにひどくうろたえてしまった。それほどに迫力を帯びていた。
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著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年宮城県生まれ。早大学院から早稲田大へと進み、野球部に在籍。ポジションは捕手。また大学3年から母校・早大学院の監督を務めた。大学卒業後は会社務めの傍ら、野球観戦に没頭。その後、『野球小僧』(白夜書房)の人気企画「流しのブルペンキャッチャー」として、ドラフト候補たちの球を受け、体験談を綴っている。