【プロ野球】コンスタントに仕事をこなす広島・今村猛は
真のプロフェッショナルだ (3ページ目)
「たった1イニングだから……」
「毎日投げているわけじゃないから……」
本当にそうなのだろうか。
「いつもいい」というのがどれほど難しく、どれだけの努力と辛抱が必要かということは、本人がいちばんよく知っている。
コンスタントであること――つまり「プロフェッショナル」の何よりの資格。
高校時代、走者を背負った時のピッチングがあまりに見事だったことから、走者がいないと手抜きをしているような言われ方をした時期があった。
「ふふふ」
わかってないな……。そんな笑い方だった。
「このバッターにはこの程度のボールでいいだろうって、相手の技量を測りながら投げているのが、そういうふうに見えるんじゃないですか」
人の解釈をまったく気にかけない。
「自分の中では、ピッチングは“遊び”の感覚なんですよ。相手バッターのレベルを感じて、自分なりに考えて、いろんなことを試しながら、真剣勝負をする。例えば、スライダーに突っ込むバッターがいれば、もっと力を抜いて遅いスライダーにすれば、そのぶん重力で落差も出ますから、空振りが取れる」
いつもフラットに、どんな話でも淡々と。とんでもなくすごいことはやらないかもしれないが、いつも同じレベルの仕事ができる男。今村猛は、まさしくプロらしい投手になってきた。
著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年宮城県生まれ。早大学院から早稲田大へと進み、野球部に在籍。ポジションは捕手。また大学3年から母校・早大学院の監督を務めた。大学卒業後は会社務めの傍ら、野球観戦に没頭。その後、『野球小僧』(白夜書房)の人気企画「流しのブルペンキャッチャー」として、ドラフト候補たちの球を受け、体験談を綴っている。
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