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【プロ野球】原点は「弟と妹のために」。心優しき快腕・吉見一起 (3ページ目)

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

「フォームって、自分がいちばん気持ちよく投げられるのが一番いいじゃないですか。せやから、毎日見てくれている監督やコーチから『肩の開き、ちょっと早いで』とか言われると直すんですけど、他の人に『ここがアカン』って言われても、自分が本当に納得できないと直さないです」

 自立もしていた。

 吉見には3人の幼い弟、妹がいた。

 亘平くんと太佑くんの弟たちは双子。当時、彼は弟たちをとてもかわいがっていた。

「小学校6年なんですよ。双子でバッテリー組んでで、ピッチャーやっているほうが、フォーム、僕とめっちゃ似てるんですよぉ」

 父親のように笑っていた。

「そいつらのためにも、自分のためにも、早く稼いで……私立通わせてもらって、親にも無理させてるし……」

「一番の楽しみは、お母さんの作ってくれるお好み焼きを弟、妹と食べること」。そう言って、もう一度、目尻をたらして笑っていた吉見。

 2005年のドラフト1位で中日に進むと、彼は2人の弟たちを母校・金光大阪に進ませ、さらに神戸学院大でも野球を続けられるように応援を続け、妹さんも金光大阪の野球部でマネージャーをつとめた。

「親孝行したいんです……いろいろと」

 そういうことを言うヤツは、たいていそれまでに相当の「借り」を作っているものだ。

 <心優しき力持ち>

 精密なコントロールの持ち主なのに、決して技巧派ではない。中日のエースとして、いや、プロ野球を代表する快腕として奮戦する吉見一起に、この言葉はピッタリではないだろうか。

著者プロフィール

  • 安倍昌彦

    安倍昌彦 (あべ・まさひこ)

    1955年宮城県生まれ。早大学院から早稲田大へと進み、野球部に在籍。ポジションは捕手。また大学3年から母校・早大学院の監督を務めた。大学卒業後は会社務めの傍ら、野球観戦に没頭。その後、『野球小僧』(白夜書房)の人気企画「流しのブルペンキャッチャー」として、ドラフト候補たちの球を受け、体験談を綴っている。

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