【プロ野球】「調子はいい」のに勝てない。斎藤佑樹に訪れた試練の時
6月29日の西武戦で先発した斎藤佑樹は、黒星こそつかなかったが4回5失点で降板した シアトルの夜。
マリナーズがレッドソックスにサヨナラ勝ちを収めた直後、ダウンタウンのイタリアンレストランで、焼き立てのふわふわしたパンとプロシュート、アメリカでは珍しく絶妙のゆで加減で出されたグリーンピースとひき肉のパスタを心ゆくまで満喫した。ホテルに戻ったのは深夜2時の少し前。眠い目をこすりながら、部屋でインターネットを通じて西武ドームの試合を観戦することにした。
日本時間の6月29日、午後6時。
ライオンズとファイターズの試合が始まる。ファイターズの先発は、斎藤佑樹だ。これが6月最後の登板となる。5月に幸先よく白星を手にしながら、その後、勝てないままでその月を終えてしまい、ツキを変えてとばかり、6月も最初の登板では気持ちよく勝ったものの、後が続かない。波に乗り切れない流れを何とかしたいという斎藤の気迫は、海の向こうから十分に伝わってきた。
何よりも、ボールに力とキレを感じたからだ。
初回、片岡易之に対して、ストレートを続ける。初球こそ高めに浮いたものの、2球目からはアウトローへきちっと決まっていた。ボールに伸びが感じられたし、何よりも斎藤の気持ちが乗り移っていた。初回、栗山巧のヒット、エステバン・ヘルマンへのフォアボールがありながらも無失点で切り抜け、2回は2つの三振を奪うなど、三者凡退。3回も先頭の星秀和をカットボールでセカンドゴロに仕留め、先頭の片岡に戻る。
一巡目はうまく乗り切った。
しかし、野球とは紙一重の連続だ。
二巡目、トップの片岡が打った打球はセカンドの田中賢介の頭上を襲う。ジャンプ一番、田中はグラブに当てたもののわずかに届かず、この打球をヒットにしてしまった。そして迎えたのが2番の栗山。最初の打席ではアウトコースのボールを逆らわずレフト方向へ運んで、ヒットを打っている。前回の函館でも、同じようなレフト前ヒットを打っていた。
その初球、バントの構えを見せた栗山に対し、斎藤が投げたカットボールをキャッチャーの鶴岡慎也が弾いて(パスボール)、片岡を二塁に進めてしまう。
そして、3球目。
チェンジアップが真ん中高めに吸い込まれる。栗山の打った打球はライトのポール際、スタンドに飛び込んで、いったんはホームランとされた。しかしビデオ判定の結果、ホームランが覆(くつがえ)って、ファウルとなる。
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