2012.06.30

【プロ野球】原点は「弟と妹のために」。心優しき快腕・吉見一起

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

昨年は最多勝、最優秀防御率を獲得し、リーグ制覇の立役者となった吉見安倍昌彦の投魂受けて~第21回 吉見一起(中日)

 中日の「エース」が帰って来た。

 6月17日のオリックス戦で、およそ2カ月ぶりのマウンドに上がった中日・吉見一起。先発で8イニングを投げ3安打5三振1四球。立ち上がり、先頭スケールズの三塁打から犠飛による1点を献上したものの、その後5回までは走者を許さず、久々の登板としては、ほぼ完璧な内容にまとめてみせた。

 左大腿二頭筋挫傷。

 つまり、左足の太ももの裏側の筋肉の肉離れ。

 4月26日のヤクルト戦に投げて以来の「エース」のカムバックを祝福するように、ルーキー・高橋周平が決勝のプロ第1号を放ってみせた。

 昨年までの4年間で56勝22敗。

 先発して試合終盤まで投げれば7、8本のヒットは打たれるが、四球はひとつかふたつがせいぜい。軽快なテンポで両サイドを小気味よく突いて、バックにとって、こんなに守りやすい投手も少ないだろう。

 吉見が投げて、試合がダレることは決してない。

 今年2月、沖縄・北谷(ちゃたん)の中日キャンプ。

 ブルペンで、吉見が投げる。右に中田賢一、山内壮馬、左に山井大介と浅尾拓也をしたがえて、文字通り「センター」の位置だ。

 5球、6球。捕手・谷繁元伸がミットを構えるそのポイントへ、ストレートがたて続けにきまる。

 9球、10球。右打者のアウトロー。その1点に構えるミットを外さない。思わず見とれた。

 プロだ……。中田賢一、浅尾拓也も、ピンポイントに決まる吉見のコントロールには敵(かな)わなかった。