【プロ野球】12球団徹底比較。優勝のカギを握るセットアッパーの質と量

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

昨シーズン、52HPをマークしてセ・リーグMVPを獲得した浅尾拓也昨シーズン、52HPをマークしてセ・リーグMVPを獲得した浅尾拓也 オープン戦も始まり、徐々に各チームの今シーズンの戦い方が見えつつあるが、ペナントレースを占う意味で最も注目したいのが、各球団のブルペン陣だ。なぜなら、リリーフ投手とチームの成績は深い関わりを持っているからだ。

 少し遡(さかのぼ)れば、1970年代後半から80年代前半にかけて広島、日本ハムのリリーフエースとして活躍し優勝請負人と呼ばれた江夏豊をはじめ、90年代にリーグ優勝4回、日本一3回のヤクルト黄金期を支えた高津臣吾や98年に横浜を初の日本一に導いた佐々木主浩など、「名クローザーのいるチームに覇権あり」という流れがあった。それが今は、そのクローザーにつなぐ投手の役割が重視されるようになっている。つまりセットアッパーだ。

 昨年、セットアッパーの浅尾拓也(中日)がセ・リーグのMVPに輝いたことは、まさに時代を象徴する出来事だった。現役時代、巨人やダイエー(現ソフトバンク)などで豊富なリリーフ経験を持つ野球評論家の橋本清氏は次のように語る。

「今の野球はうしろの3回をどう抑えるかが勝負。そこを抑えられるチームがペナントレースも制する。僕らの時代は先発もできない、抑えもできない投手が中継ぎをやるという考え方があったけど、今は中継ぎじゃなく中締め。勝敗を左右するポイントがくる7回、8回あたりに、相手打線にプレッシャーをかけられる投手を持ったチームが上位にくる。監督と勝利の握手はできないけど、セットアッパーはクローザーと同等の役割を担っています」

『後半の3イニング』の観点から、90年代の西武(杉山賢人、鹿取義隆、潮崎哲也)やオリックス(野村貴仁、鈴木平、平井正史)、近年ではJFK(ウイリアムス、藤川球児、久保田智之)を擁した阪神のように、ゲーム終盤を3人でつなぐチームが増えてきた。JFKを確立した当初、岡田彰布監督は藤川を7回に投入していたが、著書『オリの中の虎』(ベースボールマガジン社)で次のように述べている。

「7回に得点するチャンスが多い、ここで得点すれば試合に勝つ可能性が高い、だからラッキーセブンよ。(中略)守備側から言えば、相手にラッキーセブンを作らさんかったらええんや。だから7回を0に抑えたら勝てる。(中略)ここで70%は勝てるという形にすれば、8回に80%、9回には90%くらい勝てるという気持ちで3人目の抑え投手を出せる」

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