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【MLB】大谷翔平MVPの舞台裏 投票記者の視点「彼は完全に突き抜けた存在」 (2ページ目)

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

【個人的に重きを置く遊撃手であることの価値】

 悩んだのは2位以下の順位だ。私は最終的に、大谷に次ぐ2位にヘラルド・ペルドモ(打率.290、20本塁打、100打点、27盗塁)を入れ、3位にカイル・シュワーバー(打率.240、56本塁打、132打点)を選んだ。ペルドモについては、おそらく説明が必要だろう。

 私がペルドモを2位に置いた最大の理由は、遊撃手(ショート)というポジションで非常に優れた数字を残した点だ。私は遊撃手の守る選手に特別な価値を置いている。彼らは守備範囲や肩、判断力など、チーム全体の守備の中心を担う存在であり、打撃に多少ムラがあっても、ポジションそのものの価値が大きい。ペルドモはそのショートでしっかりと結果を残し、守備の安定感も高かった。

 昨季のMVPレースを思い返すと、大谷とフランシスコ・リンドア(メッツ)がトップ2で、シーズン終盤までは拮抗しているという見方があった。最終的には9月に大谷が抜け出したが、それまではそれほど大きな差はないと見た選者もいたようだ。私の中では、ペルドモの今季はリンドアの昨季とは大きく違っていない。打撃面ではほぼ遜色なく、守備も堅実。リンドアほど守備で突出していたわけではないにせよ、ポジション価値を考えれば非常に高く評価できるシーズンだった。

 一方で、シュワーバーやフアン・ソト(打率.263、43本塁打、105打点、38盗塁)のような純粋な打者は、打撃のインパクトは大きくても、ペルドモのような守備の価値を生み出していない。私は守備の価値を強く重視しているため、2位の比較は非常に難しかったが、ペルドモを選んだのは自然な決断だった。パドレス戦で彼を何度も見てきた経験も、彼の評価を後押しした。彼が試合の細部に与える影響はかなり大きい。

 昨季の大谷とリンドアが「接戦だったか?」と問われると、今年よりは差は小さかったかもしれないが、私はそこまで僅差だったとは思っていない。ただ、リンドアが明確な2位だったことは確かだし、ペルドモの今季がそのリンドアの昨季と大きく違っていたとは感じていない。だから私は、ごく自然な流れとして「大谷1位、ペルドモ2位」を選んだ。昨季の「大谷1位、リンドア2位」がしっくりきたのとまったく同じ感覚だ。

 繰り返しになるが、1位の大谷と2位ペルドモの差は大きかった。やはり大谷の価値には遠く及ばないにしても、ペルドモはかなり過小評価されている選手だと思う。彼はリンドアがやってきたような多くの要素をこなし、遊撃手として確かな価値をチームにもたらした。そういう選手を正当に評価することも、投票者としての私の役割だと考えている。

つづく

著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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