プロ野球界にも広がるチャリティの輪 ロベルト・クレメンテが遺した「差し伸べる手」の教え
ロベルト・クレメンテのDNA〜受け継がれる魂 (全10回/第10回)
中日ドラゴンズの通訳を務める加藤潤氏は、異なる文化や価値観が交差するプロ野球の現場で、ジャッキー・ロビンソンやロベルト・クレメンテの精神を胸に、選手たちの社会貢献の意義を問い続けてきた。この連載の最終回となる今回は、多様性の尊さと「支え合う手」の意味を見つめながら、次世代へとつながる"善意のリレー"に思いを託す。
若き日の大野雄大の心を打った和田毅と、村上雅則氏をチャリティへと誘った細川佳代子氏 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
【多様性と共に生きるということ】
現在、中日ドラゴンズには、思いつくだけでも韓国、中国、フィリピン、インドネシア、アメリカ、メキシコ、ベルギー、ガーナにルーツを持つ関係者がいる。かつて在籍していた北海道日本ハムファイターズにも、ベトナム、インド、イランの血を引く者がいた。
もし自分の体の中に、「オレたち」と「あいつら」が同居しているとしたら、どうすればいいのか。片方の拳で自分自身を殴らなければならないのか。そんなことがあっていいはずがない。異なる国のルーツを併せ持つということは、誇るべき財産以外の何物でもない。
言うまでもなく、ここで語っている属性とは、単に国籍だけを指すのではなく、人種、宗教、言語、社会階層といった要素も含まれている。こうした違いを、「オレたち」と「あいつら」を分けるための材料にしてはならない。そうでなければ、いまを生きる私たちは、人種という堅固な壁を打ち破ったジャッキー・ロビンソンと、彼を支えたブランチ・リッキーに、顔向けできなくなってしまう。
握手の大切さを理解する──それは国家に限らず、個人にとっても同じだ。野球選手であれば、片手にボールやバットを握りしめながら、もう一方の手を他者に差し伸べることができる。「野球に集中するために」と、両手でバットを固く握るだけが野球選手の姿ではないと、クレメンテが身をもって示した。
運命の日、飛行機に乗らないよう説得する妻のベラに対し、クレメンテは以下のように言ったといわれている。
「今、この時にも子どもたちが死んでいっているんだ。支援物資が彼らには必要なんだよ。私の身に何かあったなら、その時はその時だ。逝く時は逝く。それだけだ」
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著者プロフィール
加藤 潤 (かとう・じゅん)
1974年生まれ。東京都出身。中日ドラゴンズ通訳。北海道日本ハムファイターズで通訳、広報、寮長に就いたのち、2011年から現職。シーズン中は本業をこなしながら、オフには海外渡航。90ヶ国を訪問。稀に文章を執筆。過去にはスポーツナビ、中日新聞、朝日新聞デジタル版に寄稿。またコロンビアのTV局、テレメデジンとテレアンティオキアに話題を提供。現地に赴き取材を受ける










