ドジャースと大谷翔平はポストシーズン不利のデータを覆せるか?〜第1シード、ホームチーム低勝率の近年の傾向〜
大谷翔平は、近年の傾向を覆して頂点まで辿り着けるか? photo by USA Today Sports/Reuter/AFLOこの記事に関連する写真を見る
大谷翔平とロサンゼルス・ドジャースは公式戦162試合を終え、98勝64敗でMLB最高勝率、ナ・リーグの第1シードとして、地区シリーズ(1回戦に当たるワイルドカードの次のラウンド)からポストシーズンに臨むことになった。
ドジャースはロバーツ監督体制になった2016年以降、高い勝率を誇ってきた公式戦の成績とは対照的に、ポストシーズンでは結果を残せていないという指摘も多い。しかし、ワイルドカード制度が導入以降、過去の結果を見ると、第1シードチームでワールドシリーズ制覇をしている例は非常に限られている事実もある。
その背景を分析しながら、このポストシーズンを占ってみる。
ドジャース・大谷翔平 2024年プレーオフ展望 前編
【データが示す上位シード苦戦の傾向】
ロサンゼルス・ドジャースは公式戦の好成績でポストシーズンに第1シードで臨むが、地元ロサンゼルスでは期待以上に、「今年こそは大丈夫なのか?」とむしろ不安の声のほうが大きい。デーブ・ロバーツ監督がチームを率いるようになって以降、公式戦は100勝以上が5度と圧倒的に強く、9年連続ポストシーズン進出。しかしながら世界一になったのは新型コロナウイルスによる短縮シーズンの2020年だけ。これまで、ほとんどのシーズンの最後は、「162試合の公式戦は何だったのか?」と頭を抱えてきたからだ。
とはいえ、これはドジャースだけの問題ではない。近年のメジャーリーグでは、公式戦での好成績がポストシーズンでの成功につながらないケースが多く、全米のスポーツファンの間では、それがジョークのように扱われている。
最高の成績を収めたチームは第1シードゆえ、ワイルドカードラウンドは免除され、選手は休養十分で地区シリーズに臨み、格下チーム相手にホームフィールド・アドバンテージも与えられる。しかし、2023年のアトランタ・ブレーブス、22年のドジャース、21年のサンフランシスコ・ジャイアンツと過去3年の最強チームが、ことごとく地区シリーズで姿を消した。162試合でベストの成績を残した上に、3つのプレーオフシリーズを制し、世界一に昇り詰めることができたのは、2018年のボストン・レッドソックスが最後だ。
ロバーツ監督は「ポストシーズンで勝てるかどうかは、運の要素が大きい。最高の選手を揃えたチームが勝つわけではなく、その時に勢いのあるチームが勝つ。これはプレーオフのフォーマットが理由」と説明している。
ワイルドカード制度導入前、つまりワールドシリーズとリーグ優勝決定戦しかなかった時代は、公式戦で100勝以上した72チームのうち32チームが世界一になった。勝率は44.4%。ところが、1995年以降のワイルドカード制度導入後、100勝以上した43チームのうち、ワールドシリーズを制したのはたった6チーム。優勝確率は13.9%にまで落ち込んでいる。
逆に、公式戦で勝ったり負けたりでも、10月に勢いに乗り、ワイルドカードから世界一になった例が少なからずある。2023年のテキサス・レンジャーズ、19年のワシントン・ナショナルズ、14年のジャイアンツ、11年のセントルイス・カージナルスなど8チームだ。
さらに最近の結果を見ると、ホームフィールド・アドバンテージの効果も薄れていることがわかる。昨年のポストシーズンでは、ホームチームが15勝26敗(勝率.366)。53年間のポストシーズンで最低の結果だ。18年以降、シリーズを制する最終戦でホームチームは6勝10敗で、「ホーム・スウィート・ホーム」とは言えない。
もともとアメリカンフットボールやバスケットボールのように、スタンドのファンが大歓声で相手チームのコミュニケーションを妨げたり、プレーを邪魔することができるスポーツではない。一方で遠征チームはチーム全員が同じホテルに宿泊し、行動を共にすることで結束しやすくなるという側面もある。
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著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。