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大谷翔平の巨大壁画を描いたバルガス氏が語る、ロサンゼルスの「偉大なヒーロー」の条件 (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【LAは王者の街、だからこそ──】

幼少期はバレンズエラがヒーローだったバルガス氏 photo by Okuda Hideki幼少期はバレンズエラがヒーローだったバルガス氏 photo by Okuda Hidekiこの記事に関連する写真を見る──ロサンゼルス近郊のボイルハイツで生まれ育ったとのことですが、子どもの頃のスポーツヒーローは?

「フェルナンド・バレンズエラ(*1)が、ヒーローでした。私はドジャースの歴史の中には超越的な人物が3人いると思っています。ジャッキー・ロビンソン(*2)、バレンズエラ、そして大谷だ。今、ドジャースタジアムに行くと、たくさんのメキシコ系、日系のファンがいる。ドジャースタジアムは世界中の人を包み込む包括的な場所に発展し、多様な文化を包み込んでいるんだ。

ただ、50年前はそうではなかった。バレンズエラによってメキシコ系の人たちが、大谷によって日本人のファンが増えた。今、壁画を見てから球場に行き、あるいは球場に行ってから壁画を見る、そんな流れができ上がっている」

*1/メキシコ出身の左腕投手。1980年にドジャースでメジャーデビューし、81年にはサイ・ヤング賞と新人王をダブル受賞しワールドシリーズ制覇の原動力に。10年間の在籍期間で162勝を挙げ、ヒスパニック系アメリカ人の英雄的存在である。

*2/1900年以降のメジャーリーグで、初めてのアフリカ系アメリカ人の選手。走攻守揃った万能選手としてニグロリーグやマイナーリーグでの活躍したのち1947年4月にドジャースでデビューを果たし、新人王を獲得。その後アフリカ系アメリカ人の選手に道を開いた。

──壁画は3月8日に制作が始まって、3月28日の地元開幕戦の前日に除幕式が行なわれました。しかし、その途中で水原一平元通訳のスキャンダルがあり、大谷自身も関与を疑われる事態になりました。

「制作し始めた頃は、通りがかりの人が"大谷を描くのはいいね"と激励してくれていたのに、事件のニュースが出ると変わった。『描くに値するの?』、『あなたも気持ちが変わったんじゃないの?』、『(描くこと)やめたいんじゃないの?』とかね。でも私のなかで、やめるということは、絶対になかった。100%、大谷を信じていたからね。心配だったのは、除幕式の日に人々が集まらないのではないかということだったけど、ドジャースファンは大谷をサポートした。ビデオを見ればわかるが、1000人近くの人たちが集まってくれたんだ」

──今季、ドジャースタジアムで試合を見ましたか。

「4月12日のサンディエゴ・パドレス戦で、ネット裏で俳優のエドワード・ジェームズ・オルモス(『ブレードランナー』など多くの映画に出演)と一緒に見たよ。大谷はホームランを打ったね。

 彼のような才能を持つ選手は、ドジャースに入ったことで次のレベルに行ける。ほかのチームとは違うんだ。NBAにたとえると、正直、レイカーズと(同じロサンゼルスの)クリッパーズくらいの違いがある」

──大谷は、今季は打者として大活躍をしています。ロサンゼルスの偉大なヒーローの仲間入りを果たしたと言えますか。

「まだ、その過程だ。ロサンゼルスはチャンピオンの町だ。優れたスポーツ選手はたくさんこの街にやって来たが、偉大なヒーローと呼ぶに値するのは、チャンピオンシップをもたらした選手だけだ。それによって人々の記憶に残る。コービー・ブライアントは3連覇したからね。大谷は勝たなければならない。3、4回は勝たないといけないね」

LAにはコービー・ブライアントの壁画が随所に数多くある photo Okuda HidekiLAにはコービー・ブライアントの壁画が随所に数多くある photo Okuda Hidekiこの記事に関連する写真を見る

【大谷DayとバルガスDayの共通点】

 このインタビューのあと、5月17日が大谷翔平の日となるニュースが報道され、バルガス氏はその日が大谷のお父さんの誕生日でもあると知った。

「実は私が9月8日を自分の日に選んだのは父の誕生日だったからなんだ。偶然の一致に驚いたよ」

 今年の9月8日、ドジャースは本拠地でクリーブランド・ガーディアンズ戦の予定だが、バルガス氏に始球式を務めてくれるよう打診、本人も快諾している。「まだ大谷とは直接会ったことがないから、楽しみだね」と言う。

 バルガス氏は世界各地でアート活動を展開しているが、特に日本がお気に入りの地でもある。

「今、京都で町屋の購入を考えているんだ。そこも仕事場のひとつに加え、年に2回、1カ月ずつ滞在をして、京都でも腰を据えて創作活動をしたいね」

 過去に札幌、東京、名古屋、大阪なども訪れてきたが、ロサンゼルスと京都を拠点にこれからも精力的な創作活動を続けていく。

バルガス氏は京都での創作活動にも力を入れている 写真/本人提供バルガス氏は京都での創作活動にも力を入れている 写真/本人提供この記事に関連する写真を見る

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

グッズコレクション 韓国の大谷翔平ファンクラブ会長

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