「大谷翔平は韓国スポーツ史上、最も愛される日本人選手」 現地記者に聞いた、その理由と時代背景とは? (3ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●文 text by Yoshizaki Eijinho

【大谷翔平人気の背景とは?】

 なぜ、大谷は愛されるのか。もちろん、実績のスゴさはその圧倒的な第一理由だ。日本人選手としてではなく、メジャーリーグのスターとして認められている。

 そのほかにも、上記したイチローらとは違う、時代の背景がありそうだ。

 韓国で初めてオンライン上で「オオタニショウヘイ」の名が登場した時期は、2012年8月頃だった。大手紙『東亜日報』が「日本の160キロ高速投手」として花巻東高時代の大谷を紹介。当時の韓国の高校野球界の有望株と比べられた。

 その後、日本で2015年に北海道日本ハムファイターズで最多勝を獲得(15勝)したあたりから、高校時代のエピソードも紹介されていく。

 かの有名な「目標達成シート(マンダラチャート)」だ。

 花巻東高校1年生の時、夢をかなえるために計画的な目標を立ててシートに記していた。そのシートの中央には「8球団からドラフト1位指名を受ける」。そのために必要な具体的なトレーニングや心構え、あるべき人間性や普段の行動なども書かれていた。

「これが韓国でも報じられるや、大反響を呼んだんですよ」(チェ氏)

 確かに2018年8月に現地スポーツ紙が「大谷翔平の"夢と目標"現実になる」という見出しの記事を掲載している。

「大谷の計画性や信念に対し、韓国では『その年齢で将来自分がどうなるのかと考えているのか』と驚かれたものです。それまでの日本人アスリートとは違ったキャラクターが確立されました」(チェ氏)

 その後も、球場のゴミをさりげなく拾う姿や、ストイックな食生活、高年俸にしては質素な生活など、本人のキャラクターが伝えられていった。

「インターネット時代だから」と言うのは簡単だ。だが、韓国内の傾向もある。

 2023年は韓国のプロスポーツの観客数が大盛況に終わった1年だった。プロ野球は5年ぶりに総観客動員800万人を記録。サッカーKリーグに至っては歴代最高の244万人を記録し、1試合あたりの平均観客動員が初めて1万人を超えた(1万733人)。

 その背景にあるのは「チームではなく、個人を応援するトレンド」だ。いわゆる「推し活」。女性からの人気がこれを支えている。サッカー代表選手のチョ・ギュソン(元全北現代、現在はデンマークのミッティランに移籍)や、女子バレーボールのキム・ヨンギョン(興国生命)らが有名だ。

 練習場に行けば会えるし、ファンサービスも受けられる。なんなら顔も覚えてもらえる。そこに魅力を感じる層が増えているのだ。女子バレーでは「男性より女性の観客が多い」点が報じられている。背景のひとつには、K-POPが世界的人気となり、メンバーに対する事務所側のガードが固くなっていることもあるという。

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