「大谷翔平は韓国スポーツ史上、最も愛される日本人選手」 現地記者に聞いた、その理由と時代背景とは? (2ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●文 text by Yoshizaki Eijinho

【これまでの韓国で有名な日本人アスリート3人】

 韓国でも有名な日本人アスリートはもちろん存在してきた。前述のチェ・ミンギュ氏は3人の名前を挙げた。まずはイチロー。

「韓国でプロ野球が生まれたのは1982年。それ以前は日本のプロ野球と言えば王貞治氏が有名でした。長嶋(茂雄)さんより王さん。ホームラン王という実績が知られたのです。代表での日韓戦が活発になってきたのは2000年代からです。そこで立ちはだかったイチローは『リスペクトされるけど、愛されるという感じではない』。グラウンド内外でいろいろありましたし」(チェ氏)

 特に2006年の第1回WBCの際には、イチローが開幕前に明かした韓国に対する意気込み「向こう30年は日本に手は出せないな、という感じで勝ちたいと思う」が曲解されることもあった。

「これは韓国代表選手をかなり怒らせました。同じメジャーリーガーだったキム・ビョンヒョンなどは『コメントが漫画みたいだけど、読み過ぎなのか?』と言っていましたね」(チェ氏)

 もうひとりは、浅田真央。

「韓国でも認められた選手ですよ。しかし、バンクーバー五輪フィギュアスケートでキム・ヨナと金メダルを競った際には『ライバル』という視線の対象となってしまいました」(チェ氏)

 さらにサッカーの三浦知良(カズ)。

「彼の場合は完全にライバルとして見られていました。近年の長く現役を続ける姿についてはポジティブな声も多いですが」(チェ氏)

 確かに特に1990年代は「ミウラ」と呼ばれ、その音は韓国語で「憎い」を意味する「ミウォラ」に音が似ていることから「ミウラ・ミウォラ」という言葉が流行ったりもした。「実力は認めるものの、憎い存在」との位置づけだったのだ。

 ちなみに、サッカーでの「韓国での日本人アスリート」というと、筆者にも印象深い記憶がある。2015年に韓国の最大手ポータルサイト『NAVER』のサッカーコーナーで日本サッカー関連の短期連載を持った時のことだ。

 担当者に言われたのはこういった内容だった。

「とにかく、ホンダ(本田圭佑)、カガワ(香川真司)という単語をたくさん入れて書いて下さい」

 当時、サッカーの世界では日本の欧州組が台頭。2011年の札幌での対戦では3-0で日本が大勝を挙げる「札幌の惨事(あくまで韓国側の言い方)」という出来事が起きていた。

 本田圭佑(当時ミラン)、香川真司(当時ドルトムント)はその象徴で、要は「日本のトップアスリートの名前を出すことで、韓国の読者を煽ってほしい」というリクエストだった。憎さ半分、羨ましさ半分。だからこそ、アクセス数が取れるのだと。

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