大谷翔平のドジャース移籍に「落胆の声」はなし ヤンキースが本腰を入れなかった事情にファンも納得のわけ (3ページ目)
【お互いの思惑が一致せず】
ただ......そんな勝手な思いはあっても、もちろん「大谷が間違った選択をした」などと言いたいわけではない。
直近の11年中10年でプレーオフ進出という、近年のドジャースの安定した強さはヤンキースを上回る。打線では31歳のムーキー・ベッツ、34歳のフレディ・フリーマンという2人の元MVPが格好のプロテクションになり、大谷が勝負を避けられるケースも劇的に減るはずだ。
先発投手陣には補強が必要だが、大谷の契約が後払いであることも助けになり、トレードで獲得したタイラー・グラスノーとの契約をすでに延長した。山本の獲得も有力と伝えられ、間違いなく上質なローテーションを作ってくる。
来季のプレーオフ争いは濃厚。"とにかく勝ちたい"という大谷の希望通りのチームになっていくはずで、住み慣れた南カリフォルニアの地に残れるのもファクターのひとつに違いない。だとすれば、大谷はバレロ代理人と共に最高のチョイスをしたのだろう。「東海岸には興味はない」という説が本当かはともかく、ドジャースという選択肢があるなら、大谷はヤンキースをはじめとする東のチームに目を向ける必要はなかったのだ。
つけ加えておくと、ヤンキース側から見ても大谷は必須の選手ではなかった。
昨季、7シーズンぶりにプレーオフ進出を逃した名門にとって、今オフは外野手と先発投手陣の補強が急務。基本的にDH専属で、右肘手術の影響で来季は投手として登板できない大谷は、そのプランにフィットしなかった。
現ヤンキースのDHには、2027年(2028年はチームオプション)まで大型契約を残したジャンカルロ・スタントンがいるため、まずスタントンを放出しない限りはスポットに空きはない。スタントンをトレードできたとしても、アーロン・ジャッジをはじめとする他の主力選手のために、できればDHは空けておきたいところだ。
そんな状況を考えれば、大谷獲得に関して最初から本腰を入れていなかったのも理解できる。WM中、通算160本塁打のフアン・ソトをパドレスからトレードで獲得して外野補強に成功し、今後は山本をはじめとする先発投手のテコ入れに力を入れるのが既定路線。筋の通った方向性が見えるだけに、大谷のドジャース契約時にも、ファンの間から特に落胆の声は出なかった。
2017年、大谷の初渡米時、ヤンキースが最終候補に入らなかったことは大きな話題になった。ニューヨーク・デイリーニューズ紙が「(東海岸を怖がった)臆病者(What a chicken)」などという見出しをぶち上げたのは記憶に新しい。
一方、今回の契約後は、"Shohei The Money!(翔平は金だ!)"といった超高額契約を揶揄するような見出しがあったくらい。その記事内容や紙面作りから多少の妬みは感じられても、批判的な空気感は伝わってこなかった。
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